物流・決済などのEC環境が整備-台湾のEC市場動向(1)-

(台湾)

交流協会(台北)、海外調査部

2016年10月05日

 台湾の資訊工業策進会によると、2015年の台湾の電子商取引(EC)市場は約9,000億台湾元(約2兆8,800億円、1台湾元=約3.2円)で、そのうちBtoCが約5,000億台湾元、CtoCが約4,000億台湾元だ。小売業全体に占めるEC市場は現在のところ11.7%で、今後の成長が見込まれる。台湾のEC市場動向について4回シリーズで報告する。

<スマートフォンが急速に普及>

 台湾では物流、決済、スマートフォンの普及など、ECを行う上での基本的な環境が整っている。物流面では20167月現在、コンビニエンスストアの7Eleven(統一超商)が台湾全土で5,036店舗、ファミリーマート(全家)が2,985店舗ある。利用サイトによっては、ECで購入した商品の受け取りや代金の支払い、またはオークションの商品出荷がコンビニでできる。また、商品出荷場所が近ければ、注文・支払いの36時間後には商品を届けるサービスを行っている企業もある。決済面では、クレジットカードが普及していることに加え、これらのコンビニでの決済システムも充実している。

 

 また、ここ数年のEC市場拡大の背景には、スマートフォンの急速な普及がある。台湾では、スマートフォンの利用時間が長い。2014年のミルウォード・ブラウン(Millward Brown)の調査によると、1人当たりの1日のスマートフォン経由のインターネット平均利用時間は197分と、調査対象32ヵ国・地域で最も長かった。台湾のEC関連企業から成る業界団体の台湾網路及電子商務産業発展協会(TiEA)も、携帯電話の利便性の向上がEC市場拡大の背景にある、と指摘している。特にこの3年ほどで、スマートフォン画面の拡大、通信速度の高速化や、携帯電話でも決済可能となったことがEC市場の成長を後押ししているという。

 

<ウェブ広告やSNSの評価が主な情報源>

 EC市場では、「3C商品(スマートフォン、デジタルカメラなどのデジタル家電)」の人気が最も高いとされており、以下、化粧品・衛生用品を含めた日用品、衣服、交通チケット、レストランのクーポン券、と続いている。レストランのクーポン券については、団購(家族や友人との団体購入)」が多いといわれるが、個人で購入することも多い。中華料理、日式(和風)料理、洋食を中心に、小規模店から大規模店まで幅広い飲食店がクーポン券を出しており、台湾での外食分野の競争ぶりがEC市場でもうかがえる。

 

 消費者の情報源については、産業情報研究所(MIC)やTiEAのヒアリングによると、台湾ではスマートフォンの利用率が高いこともあり、ウェブ広告の効果は大きいようだ。ただし、広告だけで商品購入を決めるのではなく、フェイスブックやインスタグラムなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上での評価や、有名人のブログを参考にする人も多い。特にフェイスブックの利用率が高く、企業の中には粉絲團(ファンページ)を設けて、多くの情報発信を行うケースも多い。

 

<越境ECサイトには言語の障壁も>

 CtoC市場においては、シェアが高いとされる中国大手のアリババ集団による淘宝網が代表的な越境ECサイトとして挙げられる。越境ECを行う上で障害となる言語の問題は基本的になく、決済もクレジットカードのほか、台湾内の銀行やコンビニで可能なため、多くの台湾人にとってハードルが低い。また、同サイト上の商品が比較的安価なことも魅力の1つだ。

 

 一方で、台湾人消費者に人気の高い日本や韓国の越境ECサイトは言語の障壁が高い。また特に日本のECでは、海外発送を行っていないところが多いようだ。ただし、台湾には日本語ができる人も少なくなく、日本語の対応が可能な人が個人的に購入するケースや、「代購」という代理購入を専業とする業者が希望を募って日本や韓国からECを利用して商品を購入して、転売するケースもある。なお、台湾では現在のところ、3,000台湾元以内の個人輸入商品は免税だが、制度の見直しが検討されている。

 

(奥山亮/交流協会、加藤康二)

(台湾)

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