今後の重点分野はOtoO方式のサービス-台湾のEC市場動向(4)-

(台湾)

交流協会(台北)、海外調査部

2016年10月11日

 台湾の電子商取引(EC)市場で2014年からサービスを提供する中華優購〔加倍奉還(ベネフィットワン)〕。同社事業開発部の高橋裕也協理(営業ディレクター)に、今後のEC市場の展望とビジネス展開について聞いた(7月29日)。シリーズ最終回。

<出店料や広告料は無料>

問:台湾での事業内容は。

 

答:2014年から台湾でサービスを開始した。当社の日本における展開と同様に、主に企業の従業員向け福利厚生としてECサイトを運営している。当社と契約した企業の従業員は当社サイトを使って安く商品が購入できる仕組みだ。現在、約250社と契約しており、会員数は約60万人だ。利用者は3545歳が多い。なお、個人向けサービスもしており、この場合は年会費1,200台湾元(約3,960円、1元=約3.3円)をいただいている。

 

問:運営サイトの形態と特長は。

 

答:当社の運営サイトの基本はモール型だ。プラットフォームの運営、決済に関するサポート、掲載商品選定は行うが、商品発送などは出店企業に行ってもらう。特長は出店料が無料なこと。広告料もいただかない。出店料や広告料などの経費をかけずに、ECサイトに店を出すことにより、長いスパンで送客(ネットから実店舗への誘導など)ができる場を提供している。現在のところ、当社サイトの出店企業は約500社で、商品数は約20万点だ。

 

問:サイトの人気商品は何か。

 

答:人気商品は「3C商品」(スマートフォン、デジタルカメラなどのデジタル家電)で、化粧品も人気だ。3C商品では、台湾の消費者は最も安く買えるサイトを比較検討しており、価格が最大のポイントだ。また、高年齢層に関しては健康食品も人気が高い。

 

問:日系企業との取引状況はどうか。

 

答:日系企業の出店はまだ少なく、今のところ台湾系企業の出店が中心だ。ただし、ここ数年は日系飲食企業の出店が増えている。日系飲食店を利用する台湾人のニーズの高まりが背景にあると考えられる。具体的には、当社のプラットフォームで割引クーポン券を発行できるようにし、送客のツールとして活用してもらうというオンライン・ツー・オフライン(OtoO)」の方式だ。飲食の分野はさらに力を入れていきたい。

 

<消費者向けPRが重要に>

問:台湾のEC市場をどうみるか。

 

答:台湾ではスマートフォンの普及率が非常に高く、ECが今後さらに浸透していくと考えている。スマートフォンのユーザー層も広く、日本よりもECはなじみやすいかもしれない。当社はスマートフォンのユーザー向けに、自社サイトへの誘導を図るアプリを持っている。

 

 台湾の消費者は流行に敏感で、商品PRは重要だ。各社はフェイスブックをよく利用しており、台湾でのビジネス展開では効果的だと思う。このほかでは、テレビ広告も消費者への宣伝効果という面で有効な方法だ。

 

問:今後のビジネス展開の重点は。

 

答:日系企業の出店はあるものの、日本の商品はまだ多くない。今後、OtoO方式や越境ECも含めて日本の商品やサービスを多く取り入れていきたいので、最近では中国の越境EC市場に出品する企業にも、当社のプラットフォームに参加してもらっている。当社のプラットフォームにある日本の商品を注文すれば、数日で商品が届く。台湾の消費者は日本商品へのニーズと親和性が高いので、こうしたサービスを介して、より多くの日本商品を台湾市場に紹介していきたい。

 

(奥山亮/交流協会、加藤康二)

(台湾)

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