付加価値税の保税認定要件が変更-IMMEX企業、国内向け販売は確定輸入申告で対応する必要-

(メキシコ)

米州課

2016年09月30日

 輸出向け製造・マキラドーラ・サービス業振興プログラム(IMMEX)の登録企業などが、部品・原材料を一時輸入する際に必要な付加価値税(IVA)の保税認定要件が5月9日以降、実質的に変更されていることが判明した。保税認定を受ける、あるいは翌年以降も更新するためには、過去12ヵ月で一時輸入した部材の60%以上を再輸出するか、国内の他のIMMEX企業にバーチャル輸出しなければならず、今までのように輸入ステータスの変更をして国内販売した部分は考慮できなくなった。国内向けの商流については今後、一時輸入ではなく、確定輸入申告で対応する必要が出てくる。

<一部輸入部材の60%以上は「再輸出」、輸入ステータスの変更は認めず>

 大蔵公債省は59日、連邦官報において2016年度の貿易に関する一般規則(SAT貿易細則)を改定する第一次決議を公布し、国税庁(SAT)が行う複数ある企業認定制度の体系を整理し、恩典を再編成した。その中で、IMMEXなどを適用した一時輸入におけるIVAの保税(厳密にはIVAと同種の内国消費税である生産サービス特別税IEPSも保税対象)の恩典を、SATに認定された企業のみに限定するIVAIEPS保税認定制度の恩典とその登録要件を一部変更した(2016年6月1日記事参照)。

 

 今回、明らかになったのは、IMMEX企業のIVAIEPS保税認定要件の1つである「直近12ヵ月の一時輸入額の60%以上について再輸出や「バーチャル輸出」(注)すること」という要件についてだ。従来は「再輸出」に加えて「輸入ステータスの変更」や「サービスの提供」も明示されていた。今回、「再輸出」のみが明示的に要件として記載されているが(第7.1.2.A.III)、「企業認定スキーム登録制度(RECE)」の申請フォーマットおよび入力ガイドをみると、従来どおり「輸入ステータスの変更」や「スクラップになった部分」なども60%の内数として計算に加えることになっている(申請フォーマット要件6.3)。

 

 規則の本文と申請フォーマットの要件の記載が異なることは、事業者にとって法的安定性を欠くため、ジェトロは5月末以降、SATに対して同部分についての明確な確認を求めていた。その結果、9月末になって、ようやくSAT貿易監査局のマリア・エレナ・ピメンテル法務支援第9班長から以下の回答を得られた。

 

5月末のSAT貿易細則の改定以降は、IVAIEPS保税認定の要件である60%の比率の中には「再輸出」(申告コード「RT」)や「バーチャル輸出」(同「V1」)で申告したものだけが入り、輸入ステータスの変更(「F4」)を行った部分は計上できない。

○申請フォーマットの記載(要件6.3)は誤りであり、今後修正したものが官報公示される。

 

<輸出比率を考慮して申告形態を選択>

 IMMEXの登録要件としての輸出義務(IMMEX政令第11If)は、年間50万ドル以上の輸出、あるいは、総売上高の10%以上が輸出収入であることだ。従って、IMMEX企業の中には売り上げの60%以上を輸出していない企業も多い。IVAIEPS保税認定の要件として、「過去12ヵ月間に一時輸入した部材の60%以上を再輸出すること」が求められるとすると、輸出比率が低い企業の場合、輸出比率に応じてあらかじめ部品・原材料の輸入申告形態を考慮しないと、IVAIEPS保税認定の要件を満たさず、翌年の保税認定が取り消されることにより、IVAの保税が不可能になってしまう。

 

 従来、輸出と国内販売の双方を行うIMMEX企業の場合、外国から部品・原材料を輸入する段階では全量を一時輸入形態で申告し(申告コード「IN」)、国内販売する部分のみ輸入ステータスの変更(「F4」のコードで輸入申告)を行い、商品価格にIVAを添加した上で国内販売することが多い。この申告形態だと輸出比率が低い企業は、IVAIEPS保税認定の要件である60%を達成できないことになる(図1参照)。

図1 保税認定要件を達成できない輸出入申告形態(ケース1)

 従って、輸出(バーチャル輸出を含む)比率が少ない企業の場合、外国からの部品・原材料の輸入時点で再輸出(RT)向け、バーチャル輸出(V1)向け、国内販売向けの比率をある程度考慮し、国内向けの商流については一時輸入(IN)ではなく、確定輸入(A1)の形態で輸入することが必要だ。そうすることにより、60%の計算の分母となる一時輸入の額を減らすことができ、求められる比率の達成が可能になる(図2参照)。

図2 保税認定要件を満たす輸出入申告形態(ケース2)

 なお、SATの元職員であり、通関コンサルタントを務めるペドロ・トレホ氏によると、60%の比率を計算するための分母となる「一時輸入」には、自らが直接外国から一時輸入申告した部材(「IN」コードで輸入調達した部材)だけでなく、他のIMMEX企業からバーチャル輸入調達(「V1」)した部材も含まれる。従って、「V1」調達が多過ぎると60%の比率を達成しない可能性も出てくるため、他のIMMEX企業から部品などを保税で調達するIMMEX企業は、自らの輸出比率を考慮に入れ、国内向けの商流に用いる場合には、可能な範囲であらかじめサプライヤーに当該部材の輸入ステータスの変更を依頼し、内国貨物として調達するなどの対策が必要になるだろう。

 

(注)「バーチャル輸出」とは、IMMEX企業が一時輸入した部材を使用して製造した製品を、他のIMMEX企業にIVAを添加せずに保税で引き渡すことを意味し、「V1」のコードで輸出申告する。受け取る側にとっては「バーチャル輸入」となり、「V1」で一時輸入申告する。製造を行わない倉庫業などのサービスIMMEXの場合、一時輸入部材に加工を加えずに他のIMMEX企業に移転することができるが、その際の申告コードも「V1」となる。

 

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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