フリーゾーンでの貨物の保管期間が原則2年に

(タイ)

バンコク発

2016年09月29日

 タイのフリーゾーン内に持ち込まれ、そのままの状態で保管される貨物に対し、最大2年間という保管期間が設定された。高級乗用車が関税未払いのまま、保管されている状況への対応措置とされている。なお、フリーゾーン内で加工される原材料・部品や、そのために使用される機械類などについては規制の対象とはならず、保管期間は定められない。

<持ち込まれた状態のままの貨物が対象>

 プラユット暫定政権の国家平和秩序維持評議会(NCPO、議長は首相)は825日付で、フリーゾーン内の貨物の保管期間に関する指令No.512559(2016を通告し、即日発効とした。

 

 フリーゾーンには、税関の管轄するカスタムフリーゾーンと、タイ工業団地公社(IEAT)が管轄するIEATフリーゾーンがあるが、今回の指令はいずれも対象となる。これまで、海外からフリーゾーンへ輸入される貨物、および国内一般地域から在庫や輸出目的で搬入される貨物に関しては、特に保管期間が定められていなかった。今回の指令により、今後は原則として保管期間は2年となる。ただし、規制の対象となるのは、あくまで搬入された状態のまま保管される貨物であり、フリーゾーン内で加工するために搬入される原材料・部品や、そのために使用される機械類などについては対象にはならない。

 

<免税状態で保管されている高級車などに対処>

 通常、海外や国内一般地域からフリーゾーン内に貨物が持ち込まれる場合、持ち込み時点では関税や付加価値税(VAT)は賦課されず、消費目的で国内向けに搬出される段階で賦課される。そうした恩典を受けようと、高級車などが輸入税を支払わないままフリーゾーン内で保管されている事例が増えており、今回の措置はそうした事態に対処するためと説明されている。

 

 指令のポイントは以下のとおり。

 

1)関税分類番号(HSコード)8702項(10人乗り以上の自動車)および8703項(乗用車およびその他自動車)に属する新車の完成車で、フリーゾーン内へ持ち込まれてから既に2年以上経過しているものについては、指令の発効日である2016825日から3ヵ月以内に、国内向けに通関(関税およびその他国内税を支払って)して持ち出すか、もしくは輸出されなければならない。

 

2HSコード8702項および8703項に属する新車の完成車のうち、指令の発効日時点で持ち込みから2年未満のものについては、2年が経過するまでに、国内向けに通関して持ち出すか、もしくは輸出されなければならない。

 

3)フリーゾーン内に保管されている貨物のうち上記(1)および(2)に属さないもので、指令発効日よりも前に持ち込まれたものに関しては、発効日から2年以内に、国内向けに通関して持ち出すか、もしくは輸出されなければならない。

 

4)上記(3)と同じ分類の貨物に関し、2016825日以降にフリーゾーン内に持ち込まれる貨物に関しては、持ち込まれる日(保管開始日)から2年以内に国内向けに通関して持ち出すか、もしくは輸出されなければならない。

 

5)上記(2)~(4)に属する貨物で、上記期限内に他のフリーゾーンに貨物を移動する場合でも、最終的な持ち出し(国内販売もしくは輸出)期限は変更されない。

 

6)上記(2)~(4)に属する貨物に対する保管期間の延長は、税関長もしくはIEAT総裁が許可をした場合に限り認められる。

 

7)フリーゾーン内の貨物が規定された保管期限を過ぎた場合、税の恩典は受けられなくなり、期間の満了日に、国内販売関税およびその他国内税(VATなど)を支払う必要がある。

 

 なお、タイ関税局は922日、ジェトロ・バンコク事務所の問い合わせに対し、「本指令だけでは詳細な手続きが不明な部分もあるため、近日中に、本指令に係る詳細手続きに関する通達を出す予定」と説明している。

 

(伊藤博敏)

(タイ)

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