アリババ、電子商取引の国際ルール作りに意欲-政府もG20首脳会議などで後押し-
(中国)
上海発
2016年09月16日
電子商取引(EC)最大手アリババ集団の馬雲取締役が、ECの国際ルール作りのための「世界電子商取引プラットフォーム」(eWTP)構築を国際会議の場などで提案している。これを後押しするように、中国政府は9月上旬、G20ビジネスサミット(B20)の提案とG20首脳会議の共同声明にeWTPを国際貿易活性化の目玉政策として盛り込んだ。中国は官民こぞってeWTP構築を売り込み、ECの国際ルール作りを主導する意欲をみせている。
<プラットフォーム構築を各国政府や貿易機関に提案>
アリババ集団の馬取締役は3月23日、海南省で開かれたボアオ・アジアフォーラム2016年年次総会でeWTPを初めて提案した。eWTPの構築を通して、ECの国際ルール作りの促進や越境ECのバリアフリーを実現し、中小企業および女性や若者の起業家を支援するとの提案だ。それ以降、馬取締役はさまざまな国際会議の場などで、各国政府や貿易関連の国際組織にeWTP構築を提案してきた。また、中国政府も、9月3~4日に浙江省杭州市で開催されたG20ビジネスサミット(B20)と9月4~5日に開催されたG20首脳会議でもこの提案を後押しした。
馬取締役は9月3日にB20で演説し、eWTPの構築を呼び掛けるとともに、EC商品の24時間通関および年間輸出額100万ドル以下のEC業者に対して免税する優遇策を、初期段階の国際ルールとして提案した。
また、中国国際貿易促進委員会(CCPIT)の姜増偉会長は9月3日、B20を代表して、習近平国家主席に「2016年B20政策提議報告」(B20提案)を提出した。B20提案はCCPIT主導で作られ、国際貿易活性化の目玉政策として馬取締役のeWTP提案を盛り込んでいる。
一方、G20首脳会議に参加した20ヵ国は9月5日、共同声明を発表した。同声明にeWTP提案が目玉政策の1つとして盛り込まれたのは、中国がECの国際ルール作りで主導権を握る意欲の表れといえる。
<WTO事務局長も提案を歓迎>
アリババのeWTP提案が国際社会の注目を集め始める中、WTOのロベルト・アゼベド事務局長はG20首脳会議閉幕翌日の9月6日、アリババ本部(杭州市)を訪問した。馬取締役が、これまで国際貿易では主に大企業が恩恵を享受していたが、eWTPの構築によって国際貿易システムを改善し、ECに取り組む中小企業と個人起業家に国際貿易の恩恵をもたらすことができると訴えたところ、アゼベド事務局長も提案を歓迎する意向を表明したという。
このほか、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領が9月2日、カナダのジャスティン・トルドー首相が9月3日、イタリアのマッテオ・レンツィ首相が9月4日、オーストラリアのマルコム・ターンブル首相が9月6日に、それぞれアリババ本部を訪問し、自国の中小企業や商品の中国進出に関して協力を求めた。ターンブル首相は、eWTP提案が世界経済に成長のチャンスを提供していると評価した、と報道されている。
(文涛)
(中国)
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