景気下振れ圧力に対処、国務院が企業コスト軽減指針
(中国)
広州発
2016年09月26日
国務院は8月22日、「実体経済企業コストの軽減方案」を発表し、景気下振れ圧力に効果的に対処するため、人件費低減をはじめ税負担や資金調達コスト、物流費など企業コスト削減指針を示した。日系企業の工場などが多数進出している広東省では、これを先取りするかたちで最低賃金基準の引き上げを2年間見送り、社会保険の事業主負担率を全国最低レベルに据え置くなどの措置を取っている。
<広東省は最低賃金基準引き上げを2年間見送り>
国務院が8月22日に示した「実体経済企業コストの軽減方案」は各地方に対し、企業の負担能力を考慮した上で、労働者の最低生活を保証するため、最低賃金基準の調整幅と調整頻度を合理的に確定することを求めている。8月時点で最低賃金基準の引き上げを発表したのは8つの省市で、前年同時期の18と比べ大幅に減少している。
広東省人力資源・社会保障庁によると、同省の現行の最低賃金基準は2015年5月1日に発布されたもので、省内で最も高い地域の広州市は月額1,895元(約2万8,425円、1元=約15円)となっている(注)。2011年比の上昇率は45.8%で、全国と比べて低い水準にとどまってる(表1参照)。2011年比の上昇率では江西省が2.1倍、市レベルでも重慶市72.4%、上海市71.1%、天津市68.1%、北京市62.9%、深セン市53.8%と、いずれも広州市と比べて大きく上昇している。しかし、広東省政府は「方案」を先取りするかたちで、2月に「供給側構造的改革におけるコスト軽減行動計画(2016-2018)」を発表し、2016、2017年の最低賃金基準は2015年の水準を維持するとしている。
<全国最低レベルの社会保険の事業主負担率を維持>
「方案」はまた、企業の人件費負担を軽減するため、2016年5月1日から2年以内に養老保険と失業保険の事業主負担の保険料率を引き下げるとしている。養老保険については、(1)事業主の負担率が20%を超えている省は20%に引き下げる、(2)事業主負担率が20%でかつ、2015年末に基金の累計残高が支払い可能月数9ヵ月分を超えている省は段階的に19%に引き下げる。失業保険については、事業主負担の保険料率を現行の2%から段階的に1~1.5%に引き下げ、個人の負担率は0.5%を超えないものとする、となっている。
人力資源・社会保障部の発表では、養老保険の個人負担率は全国一律で8%で、事業主負担率は上海が21%、山東省と福建省が18%、広東省と浙江省が14%、その他が20%などとなっている。19%に引き下げることができるのは北京市、天津市、山西省など20省市に達し、養老保険の事業主負担率を引き下げることで368億元の企業負担の軽減につながるとしている(表2参照)。また、失業保険料率を0.5~1%引き下げれば300億~600億元、2015年に引き下げた失業・労災・出産の保険料率分も加えれば合計1, 200億元の企業負担の軽減になると予測している(「経済参考報」4月25日)。
広東省人力資源・社会保障庁へのヒアリングでは、同省では養老保険の事業主負担率は中国で最低レベルの14%を維持する方針で、失業保険については2016年3月1日に2%から1%(事業主負担率:1.5%→0.8%、個人負担比率:0.5%→0.2%)に引き下げている。
(注)広東省内では地域によって最低賃金基準が異なり、1,210~1,895元に分類されている(深セン市を除く)。
(盧真)
(中国)
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