ユーラシア経済連合とのFTA、10月5日に発効

(ベトナム、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス)

ハノイ発

2016年09月07日

 商工省ウェブサイト(8月17日)によると、ベトナムとユーラシア経済連合(EEU:ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス)との自由貿易協定(FTA)が10月5日に発効する。同FTAが発効することで、ベトナムとEEU双方は品目ベース、貿易額ベースともに約90%の関税が撤廃される。

<ベトナムのFTAEPA10協定目>

 EEUとのFTAは、20133月にロシア、ベラルーシ、カザフスタン3ヵ国の関税同盟との間で交渉が開始され、201412月の第8回交渉で妥結した。20151月のEEU発足に伴いアルメニア、キルギスが加わり、同年5月、両国が正式署名した。今回のFTAは、ベトナムでは10協定目のFTAEPA(経済連携協定)となった。

 

 同FTAの協定書は、15章から構成される。具体的には、物品貿易、貿易救済措置、原産地規則、貿易の技術的障害のルール(TBT)、衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS)、サービス貿易、投資、知的財産、競争、電子取引技術などが規定されている。同FTAの協定書は、ベトナム商工会議所(VCCI)のウェブサイトに掲載されている。

 

 現地報道によると、同FTAが発効されることで、ベトナムとEEU双方は品目ベースと貿易額ベースのそれぞれで約90%の関税が撤廃される。2020年までに双方の貿易額が100億~120億ドルとなることが予想され、2014年の40億ドルを大きく上回ることになる。またベトナムは、農産品、水産品、縫製、靴、木製品を中心に、毎年1820%の輸出増が見込まれ、特に水産品の多くは、FTA発効と同時に関税がゼロとなる。一方で、畜産品、機械設備、輸送機器の市場を開放することにベトナムは同意している。

 

EEU初のFTA相手国、巨大市場に期待>

 VCCIのレポートによると、同FTAのメリットとして、主に貿易面で3点を挙げている。1つ目が、ベトナム側はEEUの市場、特にロシアの巨大市場に注目していることだ。ベトナムからロシアへの輸出額は2015年で143,900万ドル(前年比20%減)となっており、国・地域別では26位とそれほど大きくはない(ベトナム税関総局)。同レポートでは、ロシアはWTOに加盟しているが、特に農産品などは依然として関税率が高いと分析している。その上で、同FTAが発効されることにより、それらの関税率が削減され、輸出が伸びることが期待されている。

 

 2つ目が、EEUにとってFTA締結・発効は、ベトナムが初めての相手国となることだ。EEUは他国・地域ともFTA交渉しているが、進展してないか当初スケジュールより遅れている。このため、同FTAが発効すれば、ベトナムは他国・地域と比べて優位に立つことができるとみている。

 

 3つ目はベトナムの輸出品目とEEUからの輸入品目は競合することがなく、補完関係にあることだ。ベトナムが市場を開放したとしても、ベトナム経済に悪影響を及ぼすことはないと説明している。また、ロシアには多くのベトナム人がビジネスや留学などで居住しており、彼らの経験やネットワークを生かしてロシア市場における販路開拓、投資拡大も可能と指摘する。

 

 当地日系企業の影響は、EEUへの輸出が多くないことから軽微と考えられる。しかし、自動車部品や電子部品の分野で、ロシア向けに輸出している企業があり、ジェトロに相談するケースも出てきている。同FTAの原産地証明書や関税率引き下げスケジュールに関する国内法は、まだ公布されていない。発効に向けて関連法の整備が急がれる。

 

(佐藤進)

(ベトナム、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス)

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