在プノンペン企業を訪問し税務情報を収集-税務登録の徹底と税収増が狙いか-

(カンボジア)

プノンペン発

2016年09月12日

 経済財政省は7月21日、租税総局(GDT)が8月からプノンペン市役所とともに、企業情報の収集のため在プノンペン企業を訪問する旨の通知書「039MEF.GDT」を出した。それによると、本調査は事業の実態を把握するとともに、企業側から税務に関する疑問点などを収集する予定だ。収集した情報は投資環境の改善に資する免税制度の立案に役立てる一方、税法、税務登録、その他の税務を企業経営者に周知するために活用される見込みだ。

<必要書類のコピーの準備求める>

 通知書によると、「この情報収集は企業活動に影響を与えない」としており、訪問当日の時間と手間を省くため、企業経営者に以下の必要書類のコピーを準備することを推奨している(通知書の原文およびジェトロ仮訳は添付資料参照)。

 

○税務登録済み企業

1)事業登録証明書(最新年のもの)、付加価値税(VAT)証明書

2)年間納税証明書(最新年のもの)、月次納税証明書(最新月のもの)

3)水道および電気料金の請求書(最新月のもの)

 

○税務登録未完了企業

1)企業経営者の身分証明書、パスポート、ファミリーブック、住民登録票いずれか1つ(注)

2)管轄省庁が発行した事業許可証(有する場合のみ)

3)その他のライセンス(有する場合のみ)

4)不動産の権利書または賃貸契約書および不動産に関する納税書

5)水道および電気料金の請求書(最新月のもの)

 

 現在、GDTは税収増のための取り組みを強化しており、本調査により適切に税務登録していない企業の実態把握が進むとされる。201510月には企業データの一元化に向けてオンライン税務登録システムが導入されている。

 

 GDTのコン・ビボル総局長によると、20165月時点で5,000社が登録済みだという。また、527日には、オンライン税務登録を行っていない貿易会社に関しては、財務省関税局(GDCE)が輸出入に関する事務手続きを停止する準備があることを発表した。これら施策の効果もあり、2016年に入ってからの5ヵ月間の税収は76,300万ドルと、前年同期に比べ約22%の大幅増となっている。

 

 国際協力機構(JICA)専門家としてGDTを指導している武藤静城チーフアドバイザーは、「カンボジア政府は20161月に推計課税制度を廃止し、申告納税制度へ全面移行するという大改正を行った。その実効性を確実に高めるためにも、事業実態を把握する本件施策は不可欠なものといえる。適正で公平な課税による税収の増加が、カンボジアをより自立的な財政体質へと導くことが期待される」とコメントしている。

 

(注)「ファミリーブック」には本人を中心に配偶者と子供までが登録される。一方、「住民登録」には実際にその家に同居している親戚などを含めて登録される。

 

(タイ・トー、岸有里子)

(カンボジア)

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