大幅な増収狙う、輸入関税などの税率も改定-2016/2017年度予算(2)-

(バングラデシュ)

ダッカ発

2016年09月02日

 2016/2017年度の国家予算では、3兆4,061億タカ(約4兆4,279億円、1タカ=約1.3円)が歳出額として計上された。財源を確保するため、政府は税収を35%増やすとしている。予算と同時に、幾つかの項目において輸入関税や源泉所得税などの変更も発表された。日系企業のビジネスにも影響を及ぼしそうだ。連載の後編。

<税収は前年度比35%増が目標>

 630日に成立した20162017年度(20167月~20176月)の国家予算は、インフラ整備や社会資本開発のため前年度比28.8%増の積極型となった。歳入のうち、歳入庁(NBR)による税収の見込みは24,275億タカで、前年度比35%増となる大幅な税収増加を狙う(図参照)。

図 2016/2017年度の税収の内訳

 2014年のIMFの統計によると、バングラデシュはGDPに対する税収の割合が10.9%で、191ヵ国中189位と極めて低い水準だ。前年度もムヒト財務相は、税収を前々年度から30%増やしたいとの野心的な予算案を提示し、それを確保するために、脱税に対する監視および罰則の強化を行うとした。しかし、当初は税収を2844億タカと計上していたものの、201662日時点での見積もりは17,740億タカにとどまり、当初見込みを大幅に下回った。20162017年度はNBRの職員を増やし、徴税能力を強化するとしているが、国内からは実効性を疑う声が上がっている。

 

 630日に予算案から修正を加えた実行予算が発表され、予算案と合わせて71日から以下のような変更が加えられている。

 

○直接税の主な改定点

1)個人所得の税率に変更はない。法人税率は、たばこ関連商品(かみたばこなど)企業が、これまでの2035%から、たばこ製造企業と同等の45%に引き上げられた。一方、縫製業の法人税は35%から20%へ引き下げられた。タックスホリデー(一時的な税の減免)に関する変更は特にない。また、前年度の直接税の税務申告期日が9月末から11月末に延長された。前年度の予算発表時、今年度より金融機関などの例外を除き、全企業が会計年度を76月に統一するよう義務付けられた。しかし、多国籍企業からの申し立てを受け、今年度も以前と同様自由に設定できる。

 

2)免税措置などを受けつつ、年間500万タカ以上の所得を有する企業に適用される最低取引税(Minimum Turnover Tax)が、総売上高の0.3%から0.6%(たばこ関連会社0.3%→1.0%、携帯電話会社0.3%→0.75%)に引き上げられた。ただし、事業開始から3年間は0.1%が適用される。

 

3)輸出代金の受け取り時に控除される源泉所得税が、全製品に対して0.6%から0.7%に引き上げられた。当初、1.0%への引き上げが予定されていたが、主力産業の縫製業界を代表してバングラデシュ縫製品製造業・輸出業協会(BGMEA)は「小規模事業者を立ち行かなくする」と反発したため、0.1%の引き上げにとどまった。なお、輸出による収益に対する所得税(法人税)支払いは同源泉税をもって代替とされる。

 

4)ロイヤルティーなど無形サービス供与による収入に対し、源泉課税(TDS)率が10%からから12%に引き上げられた。ただし、1回の支払額、請求額、契約額のうち最も高額なものが250万タカ(約325万円)以下の場合は今までどおり10%となる。ただし日本への当該費目の送金は、2国間租税条約が適用されるため10%が適用される。

 

5)前年度利益の5%を労働者に還元する参加者基金(Participation Fund)として繰り入れる場合、繰入額の5%を納税する必要がある。

 

6)居住者に対して各種サービスを提供する場合の源泉所得税は、表のように改定される。

表 居住者への各種サービスの源泉所得税の新旧対照表

7)徴税能力を向上するため、歳入庁内に源泉課税ユニットと移転価格ユニットを設置する。

 

○間接税の主な変更点

1)一律15%の税率を適用する新VAT法は、小規模事業者への影響ならびに徴税システム整備の遅れから、さらに1年延期し、20177月から施行する。一方、2016年夏の国会会期中に、VAT事前申告制度の廃止、VATの中央(一括)登録制度の導入、VAT徴税官の恣意(しい)的行為の監視、裁判外係争手続き(ADR)の短期化に関する法案を通過させる。VATに関する変更は以下のとおり。

 

a.ビスケット、旅行代理業、ケミカルシューズ、機械製の布帛(ふはく)生地、求職広告などに対するVAT免除措置が廃止された。

b.繊維の染色、プリント、つや出しなどの工程はVAT免除となる。

c.冷蔵庫、エアコン、食用油、私立大学などのVAT免除を20176月末まで延長する。

d.二輪車へのVAT免除は630日で終了。

e.VAT譲許税率が適用されるサービスの税率を変更(修理:7.5%→10%、建設:5.5%→6%、輸送:7.5%→10%、オフィス賃貸:9%→15%)。※ただしIT企業のオフィス賃貸にかかるVATは免税。

f.携帯電話サービス〔通話、ショートメッセージサービス(SMS)、ネット接続など〕へ課される補足税を3%から5%に引き上げる。

 

2)輸入関税については、幾つかの製品に対する税率が変更された。

 

a.LEDランプ部品の補足税:45%→0

b.医薬品工場向けの空調機器の補足税:30%→0

c.鉄または非合金鋼のロッドやロール(HS721315)の補足税:0%→45%、鉄または非合金鋼の形鋼(HS7216)の補足税:0%→20

d.コメの輸入関税:10%→25%、大豆カス・菜種カスの輸入関税:5%→10

e.二輪車コンプリートノックダウン(CKD)の補足税:45%→20%(ただし2年間の時限措置で、3年目以降5年間の現地調達計画の提出などが条件)

f.25%の輸入関税が適用される品目にかかる調整税:一律4%→3

g.輸入関税の税率として、これまで0%(必需品)、1%または2%(資本財)、5%(基本財)、10%(中間財)、25%(完成品)だったが、新たに15%(中間財)が加えられた。

 

 なお、輸入品への課税の変更点はNBRのウェブサイトを参照のこと。また、輸入関税には6種類あり、詳細はジェトロのバングラデシュの関税制度のウェブサイトを参照。

 

(河野敬、古賀大幹)

(バングラデシュ)

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