6割の企業がEU離脱による悪影響を懸念-自動車製造販売者協会が調査-

(英国)

ロンドン発

2016年08月04日

 英国自動車製造販売者協会(SMMT)は7月28日、英国のEU離脱が事業にどのような影響をもたらすか、などを企業に聞いた調査結果を公表した。回答企業の6割近くが自社事業への悪影響を懸念しているという。

<単一市場へのアクセス懸念が7割>

 6月末の国民投票でEU離脱が多数を占めたのを受け、SMMT7722日にアンケート調査を実施し、289社から回答を得た。それによると、国民投票の結果が自社ビジネスに悪影響をもたらすと回答した企業は57.1%に上った(表1参照)。一方で、判断するのは時期尚早、あるいは分からない、と答えた企業が合わせて4分の1を超えた。好影響をもたらすと考えている企業は1割に満たなかった。

 

 具体的に想定される影響(複数回答可)については、68.4%の企業がEU単一市場へのアクセスができなくなることを懸念している。これに、EUが諸外国と結ぶ貿易協定に関与できないこと(66.4%)、EU域内で事業を行う場合に英国事業者の声が反映されない規制に縛られること(66.1%)が続いた。

表1 国民投票結果に関するアンケート調査概要

<足元の生産状況は活発>

 SMMTは国内事業者の自動車製造状況も併せて公表した。2016年上半期の生産台数は897,157台で、前年同期比13.0%増となった(表2参照)。特にEU加盟国を中心とする輸出向けが14.9%と好調で、半期の生産台数としては2000年以降で最大になるという。

 

 足元の生産状況は活発なものの、EU離脱に伴う影響への懸念が大きいことから、SMMTのマイク・ホーズ最高経営責任者(CEO)は「近年の生産台数の増加は国民投票前の投資判断に基づくもので、EUとの無関税貿易や経済的安定性、高い技術を持つ労働力に支えられた生産性などが前提となっている。今後も英国自動車産業が成長し、雇用を確保するためには、EUとの交渉で自動車部門への配慮が必要」と述べた。

表2 英国の自動車生産台数

(佐藤央樹)

(英国)

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