フリーゾーンからの国内販売、関税撤廃条件が明確に

(タイ)

バンコク発

2016年08月22日

 フリーゾーンからタイ国内向けに販売される製品の関税撤廃条件が明確になった。新たなルールでは、フリーゾーン内で製造・加工された製品で、出荷額に占めるタイでの付加価値分(原産率)が40%を超える場合は国内搬入の際の関税が0%となる。また、タイでの付加価値に、他のASEAN諸国の原産材料・部品の価値を加算することも可能だが、ASEAN域外から調達した材料は、たとえタイが自由貿易協定(FTA)を締結している国からであっても非原産扱いとなる。

<新たな税関通達が619日に発効>

 タイにおけるフリーゾーンとは、製品の輸出を目的とする産業活動や、貿易・サービス活動に対して各種の便宜を図るために指定された地域を指し、税関が管轄するカスタムフリーゾーンと、工業団地公社(IEAT)が管轄するIEATフリーゾーンがある。フリーゾーンに立地する企業については、工場建屋の建設資材、生産用機械設備、生産用原材料・部品の輸入関税が免除される。

 

 財務省は20151217日、関税定率法(1987年)第12条の規定に基づき関税率の減免に関する新たな通達を発表。これに基づき、2016617日に新たな税関通達(2016年通達第73)が公布され、619日に発効した。

 

<実質的な製造・加工と付加価値40%が条件>

 新たな通達により、フリーゾーンに立地する企業がフリーゾーン内で製造・加工した製品をタイ国内向けに販売する場合で、以下の条件を満たせばタイ側で関税が撤廃される。

 

1)フリーゾーン内における実質的な生産プロセスを経て製造・加工された製品であること(単純な折り・曲げや組み立てなどは認められない)。なお、「実質的な生産プロセス」については、工業省工業経済局(OIE)が6月15日付通達で業種別に詳細な定義を示している。

2)フリーゾーンから出荷される製品が、付加価値ベースで40%の原産基準(工場出荷額の40%以上を国内調達材料、国内での人件費やその他の生産関連コストが占めていること)を満たしていること。

3)上記の付加価値には、タイ以外のASEAN諸国から調達したASEAN原産の原材料価格を加算することが可能。ただし、調達した原材料はASEAN物品貿易協定(ATIGA)を活用し、原産地証明書(フォームD)を伴ってタイ(フリーゾーン)へ持ち込まれたものであること。

 

 これらの条件を満たす場合、フリーゾーン企業はそれぞれのフリーゾーンの税関当局に対し、所定のフォームで申告を行い、税関当局(特別審査委員会)による審査で上記条件での原産性が証明されれば、関税0%での通関が認められる。

 

ASEAN域外からの調達は原則非原産扱い>

 なお、旧ルールでは、タイが2国間・多国間でFTAを締結する国からの調達材料を使用してフリーゾーン内で製造・加工する製品については、FTA締約国から調達した原材料の価値を加算し、当該FTAの原産地規則を満たせば、タイ国内向け搬入の際に当該FTAの協定税率を適用することが可能だった。しかし、その運用は周知徹底されておらず、フリーゾーン内で求められる最低限の製造・加工の定義なども明確にされていなかった。

 

 新たな通達により、フリーゾーン内からタイ国内向けに貨物を出荷する際のルールや関税0%の適用を受ける基準・手続きが明確になる一方、日本を含むASEAN域外のFTA締結国から調達する材料については原則として非原産扱いとなる。このため、ASEAN域外からの調達比率が高く、前述した付加価値基準を満たせないフリーゾーン企業については、国内販売の際に一般の最恵国(MFN)関税率が課せられることになり、コスト増につながる懸念もある。

 

(伊藤博敏)

(タイ)

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