日本産ナシの植物検疫条件緩和、全国からカナダ向け輸出が可能に

(日本、カナダ)

トロント発

2016年08月30日

 カナダ政府が日本産ナシの植物検疫条件を緩和し、日本全国から輸出が可能になったことが、日本の農林水産省の発表(8月8日)で明らかとなった。カナダの主要輸入国は米国、中国、アルゼンチンなどで、日本産ナシの輸入が増えるどうかは価格がカギ、とカナダの輸入業者は指摘する。

<袋がけや病害虫発生調査も不要に>

 カナダ食品検査庁(CFIA)はこれまで、一定の条件を満たした鳥取県産のナシ生果実を除き、日本からの輸入を認めてこなかった。農林水産省は、日本のナシ産地がカナダ向け輸出に取り組みやすくなるよう、CFIAと協議を進めていた。今回の規制緩和により、新たな植物検疫条件を満たせば全国どこでもカナダへのナシの輸出が可能となった(表参照)。また、これまで求められていた袋がけや、各都道府県知事が推薦する補助員による病害虫発生調査は不要となった。さらに、カナダの輸入解禁の試行期間中に通常は要求される全量輸入検査も免除される。

表 カナダ向け日本産ナシ生果実の輸出植物検疫条件に係る主な変更点

<米国など上位3ヵ国産が輸入の約85%>

 カナダの貿易統計(2015年)によると、ナシ(生鮮、有機認証されたものを除く、HSコード:0808309920)の輸入総額は11,334万カナダ・ドル(884,052万円Cドル、1Cドル=約78円)となっている。国別にみると、米国からの輸入が6,255Cドルと約55%を占め、続く中国、アルゼンチンの上位3ヵ国で全輸入額の約85%に上る。近年は米国と中国からの輸入増加が目立ち、チリ、ポルトガル、韓国からも増加傾向にある。日本からのまとまった数量の輸入は、2006年を最後に行われていない。

 

<日本産の輸入は価格がカギとカナダ企業>

 ジェトロは今回の規制緩和措置を受け、複数の生鮮果実の輸入を行うカナダ企業に日本産ナシへの関心について聞いた。

 

 カナダ西部の大手輸入会社は「当社は米国カリフォルニア産とチリ産のナシを輸入している。日本産の輸入に関心はあるが、現在は中国産が増えてきている。日本産を輸入するかどうかは価格がカギとなる」と述べた。別の輸入会社は「現在、日本から果物の輸入はしていない。他国産のイチゴや柿、韓国産ナシを扱っている。カナダ市場で日本産のナシを見たことはないが、今回の規制緩和は日本からの輸入のきっかけになるかもしれない。特に、バンクーバーを中心にブリティッシュ・コロンビア州では、中国や香港からの移民が中秋節にナシを好んで食べるので、一定の需要が見込めるのでは」と話した。その一方で、「現在は中国産を輸入している。品質、価格ともに自信があるので、日本産ナシにはあまり関心がない」といった意見も聞かれた。

 

(伊藤敏一)

(日本、カナダ)

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