ガス産業の強化に向けた政策協議会を立ち上げ-南ア貿易産業省高官らが来日、産業政策の展望を語る(2)-

(南アフリカ共和国)

中東アフリカ課

2016年08月10日

 南アフリカ共和国政府高官らの来日報告の後編。貿易産業省のガース・ストラチャン産業開発局副次官は、7月25~29日の滞在中、日本政府・関係機関や企業を相次いで訪問し、ガス産業政策の新たな動きについて説明して回った。

<鉱業と自動車に次ぐ主力産業の位置付け>

 ストラチャン副次官の説明をまとめると、概略は以下のとおり。

 

 南ア政府は鉱業や自動車産業に次ぐ新たな主力産業としてガス部門を据え、同部門の強化に向けた取り組みを進めている。具体的には、ガス業界に精通する有識者、学術関係者、企業、関係省庁、労働者団体、市民団体をメンバーとする政策協議会、ガス産業化ユニット(GIUGas Industrialisation Unit)を立ち上げ、中長期的な行動計画について議論を始めた。

 

 南ア政府は、南部アフリカ地域の原油・ガス産業の発展に向け、中核的な役割を担う構想を描いている。ガス産業を発展させることで、電力供給の安定、二酸化炭素排出の抑制、エネルギー源の多角化などに周辺国と一体となって取り組むことで、地域全体の産業開発を促し、地域統合につなげる意向だ。

 

<長期的にはシェールガス開発も視野に>

 ガス産業を強化する背景には、周辺国のモザンビークやタンザニアの沖合で近年、大規模な天然ガス田が発見されていることがある。アフリカ東部および西部の沖合には、世界の原油・天然ガス埋蔵量の1520%があるとされる。こうした資源を活用するため当面、南ア国内に独立系発電事業者(IPP)による天然ガス市場を創出することや、天然ガス輸入の拠点となる港湾を整備することなどを計画している。

 

 中期的には、モザンビーク、タンザニア、ボツワナからの大規模で安定的なガス輸入に向け、これら諸国との関係強化を図る。長期的には、国内南部カルー地方でのシェールガス開発も視野に入れている。また、ガスを活用した上流から下流までのバリューチェーンを展開させる中で、新たな事業や投資機会を創出していく計画だ。

写真 日本企業からの説明に耳を傾けるストラチャン副次官(右端)(ジェトロ撮影)

(高崎早和香)

(南アフリカ共和国)

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