コートジボワールを厳格な輸出管理を行う地域から除外-日本政府、国連安保理の制裁解除を受け-
(コートジボワール、日本)
アビジャン発
2016年08月05日
国連安全保障理事会において、コートジボワールに対する武器禁輸などに関する制裁措置を全面解除する決議が採択されたのを受け、日本政府は7月29日付で輸出貿易管理令を一部改正、厳格な輸出管理を行う地域からコートジボワールを削除した。
<国連安保理が武器禁輸などの制裁措置を全面解除>
国連安保理は2005年以降、コートジボワールに対して、内戦の長期化と深刻化を防ぐため制裁措置を科していた。しかし、紛争が終結し、平和と治安確保に向け情勢が改善しているとして、4月28日、武器禁輸などに関する制裁措置を全面的に解除する決議第2283号を全会一致で採択した。
これを受け、日本政府は、7月26日に輸出貿易管理令の一部改正を閣議決定し、7月29日付で輸出貿易管理令(昭和24年政令第378号)の別表第3の2に規定する地域(国連安保理決議において武器禁輸などに関する制裁措置の決議が採択された地域)からコートジボワールを削除した(輸出貿易管理令の運用についての一部を改正する通達)。
日本は、国連安保理決議において武器禁輸などに関する制裁措置の決議が採択された地域を仕向け地とする場合、輸出貿易管理令の規定に基づき厳格な輸出管理を行っている。コートジボワールが削除されたことで、別表第3の2に規定されているのは、アフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、エリトリア、イラク、レバノン、リベリア、リビア、北朝鮮、ソマリア、スーダンの11ヵ国となった。
<軍の装備輸入が可能に>
国連安保理は2014年4月29日、「コートジボワールに対するダイヤモンド原石および武器の禁輸措置を減免する」決議を採択、これによりダイヤモンド原石の禁輸が解除され、合法的な輸出再開の道が開かれた。武器の禁輸については小火器など一部解除にとどまっていたが、当地の治安部隊、特に警察、憲兵隊向けに警備用の装備が可能となった。なお、武器調達に当たっては国連安保理への事前届け出が義務付けられていた。
コートジボワールへの武器輸出の禁止が全面解除されたことで、コートジボワール軍の装備輸入が可能となる。コートジボワールでは今回の制裁解除を見越して2016年1月に、12億2,000万ユーロの軍用装備調達を見込む2016~2020年軍備計画法案を国民会議が承認しており、政府はフランスの造船大手ユーファスト(Ufast)に巡視船など30隻を発注している。
<国連平和維持活動は2017年に任務終了>
国連がコートジボワールで展開している平和維持活動は、国内情勢の安定化、和平定着に伴い2017年6月に終了となる。国連安保理は最大で1万人を超えていた要員を順次削減し、2016年8月末までに2,000人に減らす予定だ。これまで治安の回復、安定化を支援する任務に当たっていた人員縮小と2017年の任務終了に向けて、当地の治安維持能力を強化していく必要性が高まっている。
コートジボワールでは2002年に反政府勢力が武装蜂起して以降、反乱軍が北・西部地方を実効支配する状態が続いた。紛争勃発直後から国連をはじめとする国際社会が紛争解決に向け迅速に介入したこともあり、内戦状態には早期に終止符が打たれた。しかし武装解除が難航し、国土統一には至らないまま内政不安が長期化し、この間、散発的に緊張が高まった。特に反乱軍の支配地には、ダイヤモンドなど天然資源の産出地帯があり、資源取引が武器購入などの資金源となり、紛争の長期化や拡大が懸念されていた。
こうした情勢に鑑み、国連安保理は2005年12月15日、「武器およびダイヤモンド原石の禁輸」決議を採択。それ以降、コートジボワールへの制裁を続けてきた。
(渡辺久美子)
(コートジボワール、日本)
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