メイ内相とレッドソム閣外相の決戦に-保守党党首選の第2回投票結果-
(英国)
ロンドン発
2016年07月08日
デービッド・キャメロン英首相の辞意表明を受けて行われている保守党党首選は、2度の投票を経て、テレーザ・メイ内相とアンドレア・レッドソム閣外相(エネルギー担当)の2人に候補者が絞り込まれた。今後、両氏は本格的な選挙活動を展開し、9月9日に、次期首相となる新たな党首が選出される見通しだ。
<議員投票はメイ内相が2回ともトップ>
キャメロン首相の後継となる保守党の次期党首選びは、6月30日の立候補締め切りで、メイ内相、レッドソム閣外相に、マイケル・ゴーブ法相、スティーブン・クラブ労働・年金相、リアム・フォックス前国防相の3人を加えた5人の争いとなった。保守党の党首選びは、3人以上の候補者がいる場合、まず最終候補となる2人に絞り込まれるまで、329人の保守党下院議員による投票が繰り返され、得票数が最下位の候補者が脱落していく。7月5日に行われた第1回投票では、メイ内相が165票を得てトップに立ち、レッドソム閣外相66票、ゴーブ法相48票、クラブ労働・年金相34票、フォックス前国防相16票と続いた。この結果、最下位となったフォックス前国防相が脱落し、クラブ労働・年金相も党首選からの撤退を表明、2人ともメイ内相を支持する意向を示していた。
残った3人に対する2回目の投票が7月7日に行われ、メイ内相が199票を獲得し再びトップになった。レッドソム閣外相が84票を獲得し2位につけ、メイ内相とともに最終決戦に臨む。ボリス・ジョンソン前ロンドン市長とともに、離脱派キャンペーンの先頭に立っていたゴーブ法相は46票にとどまり、脱落した。
今後、最終候補の2人が本格的な党首選を展開する。全国約15万人の保守党員による郵便またはオンライン投票を経て9月9日に新党首が選出され、10月2日の党大会で正式に党首に就任する見通し。英国では2大政党制を前提に、下院の第1党の党首が首相に任命されるのが慣行となっており、日本などのような議会による首相指名の手続きはなく、党首就任後、エリザベス女王により首相に任命される。
<EU離脱の通告時期で認識に違いも>
これまでの2回の投票でいずれもトップに立ち、最も党首に近いとされるメイ内相は、EU残留を支持していたものの、国民投票のキャンペーン期間中、目立った発言はなかった。また、2010年から現在に至るまで内相としてテロや移民問題に取り組み、移民管理の強化の必要性を主張しているほか、残留派にくすぶる「再国民投票」の可能性を否定しており、離脱派を含めた保守党内を1つにする役割にかなっているという評価を受けている。
EUからの離脱手続きを進めるに当たっての最大の関心事が、EU基本条約(リスボン条約)第50条に基づくEUへの通告時期だが、メイ内相は、2016年末までには通告はしない、と発言している。
一方のレッドソム閣外相は、離脱派としてキャンペーンを展開してきた。党首選への立候補を見送ったジョンソン前ロンドン市長からの支持を取りつけるなど、離脱派の主流を取り込む動きをみせている。ただ、国政に転じたのは2010年からと政治経験に乏しく、EUとの困難な交渉をまとめ上げる力量があるか疑問視する声も聞かれる。しかし、レッドソム閣外相は「EUとの交渉は、離脱が真に英国にとって利益をもたらすと考える者が担うべきだ」と語り、残留派だったメイ内相を牽制している。EUへの離脱通告についても、自分が新党首・首相に就任したら、すぐにでも実施したい、としている。
(佐藤央樹)
(英国)
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