EU離脱めぐる国民投票、野党の赤緑連合が提案
(デンマーク、英国)
デュッセルドルフ発
2016年07月08日
英国のEU残留・離脱を問う国民投票において6月23日、EU離脱支持が勝利した結果を受けて、デンマークでもEU離脱問題が話題になっている。
<閣外協力の国民党も同調の姿勢>
EUにおけるデンマークの進退は、各政党にとって最大の関心事だ。デンマークが今後どのような関係をEUと持つべきかという問題について、英国の国民投票後、英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ党首が「デンマークも一緒に離脱をするだろう」と発言したことが報道され、デンマークの赤緑連合(野党)とデンマーク国民党(閣外協力)も同調する姿勢を示した。
赤緑連合党首のパニレ・スキッパー氏は今回の英国の国民投票結果について、「英国の勝利」とコメントし、デンマーク自身のEU残留・離脱の意思を問うため、2017年6月5日(デンマーク憲法記念日)に国民投票を行うことを提案した。
デンマーク国民党のクリスチャン・チュールセン・ダール党首は、英国の次にEU離脱をするのはデンマークだ、との姿勢を示している。同党は移民に対して強硬姿勢で臨んでおり、前回2015年6月の総選挙で第1党に躍進した(2015年6月25日記事参照)。しかし、両党だけでは議会の過半数に達しないため、両党のこれからの動きやその支持模様が注目される。
<国民のEU支持率は上昇傾向>
デンマークのEU(当時はEC)加盟は1973年。EU加盟国の国民に対する意識調査であるユーロバロメーターによると、1990年、デンマークではEUに対する支持率は40%と加盟国中で最低水準だった。また、1992年のEU基本条約否決により認められてきたEUの司法や社会政策に関して適用除外を認めるオプト・アウト権の継続を問う国民投票が2015年12月に行われ、オプト・アウトを継続し、EUとの連携拡大を否決したこともあり、デンマーク国民はEUからの離脱を求める傾向があるとみられてきた。しかし、ユーロバロメーター調査では、デンマークのEU支持率は上昇傾向にあり、2015年時点ではデンマーク国民のEU支持率は60%近くに上昇している。
<ラスムセン首相らはEU離脱に反対>
デンマークのラース・ルッケ・ラスムセン首相(自由党)はEU離脱に反対している。6月28日から29日にかけて行われた欧州理事会(EU首脳会議)に参加したラスムセン首相は英国の国民投票結果に関し、「非常に残念な結果だ」とコメントし、「デンマークはEU加盟国であることによって、国際的な影響力を保持することができており、経済もEUへの依存度が高く、今後のことを考えるとデンマークはEUから離脱することはない」との立場を取っている。
前首相のヘレ・トーニング・シュミット氏も、今回の英国国民投票の結果がデンマークに与える影響について、「デンマーク国民の多くはEUが完璧ではないと分かっている。一方で、EUに加盟していることがある程度、経済的、文化的にデンマークに良い影響を与えていることを理解している」と述べ、今後もEUに残るべきだ、との見方を示した。
(安岡美佳)
(デンマーク、英国)
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