ラーメンチェーンが有力パートナーを確保-ブラジルへ外食企業ミッション-

(ブラジル)

サンパウロ発

2016年07月11日

 ジェトロ主催による外食企業ミッションが6月13~15日にブラジルを訪問し、南米最大の都市サンパウロで現地視察や商談を行った。ブラジルには世界最大の日系人社会があり、日本食も浸透している。ミッション参加者のうち、ラーメンチェーン1社が有力パートナー2社を確保するなどの成果もみられた。

<サンパウロで現地視察や商談>

 ミッション一行は、在サンパウロ総領事やブラジル日本商工会議所事務局長らのブリーフィングや、ジェトロおよびブラジルフランチャイズ協会(ABF)によるブラジル市場の説明を受けたほか、サンパウロ市内の牛丼チェーン店、ラーメン店、シッピングセンターなどを視察した。その後、世界2位の出展規模を誇る「フランチャイズ見本市(ABF Expo Franchising)」に参加し、パートナー候補と商談したり、現地マスコミの取材に応じたりした。5月に開店したばかりのラーメンチェーンのブラジル1号店では、ラーメンの味や売れ筋、回転率、国内で調達可能な食材などを確かめた。開店前から店外に行列ができる盛況ぶりを目の当たりにし、巨大消費市場の現状を肌で感じることとなった。

 

<成長余地の大きいフランチャイズ市場>

 ABFによると、ブラジルには人口2億人強の約1%に相当する日系人が暮らしており、かつ長年の友好関係を踏まえ、日本文化、特に日本食への関心が強いとのことだ。

 

 2015年のブラジルのフランチャイズ市場(売上高)は約400億ドルで、3,073のフランチャイザー(本部)が存在し、フランチャイジー(加盟店)は138,343店に上るものの、フランチャイズ市場の規模はGDP比で日本の半分未満にとどまっており、成長の余地は大きい。日本のフランチャイズ市場は、景気変動に関係なく右肩上がりで成長してきており、ブラジル市場も同様の成長が期待されている。歴史的な景気低迷に見舞われた2015年も、実質GDP成長率が前年比マイナス3.8%だったのに対して、フランチャイズ市場の売上高は8.3%増加している。

 

 ブラジル国内では、フランチャイザーの53.3%がサンパウロ州に集中している。フランチャイズビジネスが活発な分野は、外食(売上高の20%)、健康・レジャー(18%)、衣類(7.4%)、ホテル・旅行(7.3%)、靴・アクセサリー(7.1%)、教育・研修(6.6%)の順だ。

 

 国内で展開する主なフランチャイズチェーンは、加盟店数順で「ボチカリオ」(香水、化粧品)、「サブウェイ」(ファストフード)、「カカウショウ」(チョコレート)、「コルショイスオルトボン」(寝具)、「エーエム・ピーエムミニマーケット」(コンビニエンスストア)となっている。

 

 外国勢は159のフランチャイズチェーンが展開している。日本ブランドでは国内に1,434のフランチャイジーを有するKUMON(公文教育研究会)が有名で、加盟店数でブラジル8位にランクされている。

 

<ロイヤルティー関連の制度に要注意>

 外国企業がフランチャイズビジネスを行うにはハードルもある。特にロイヤルティー関連の制度には注意したい。

 

 本国など国外にロイヤルティー送金を行う場合は、事前に国立産業財産権院(INPI)で技術・ノウハウの登録・審査・承認が必要となる。また、中央銀行への登録も必要だ。ロイヤルティーは、食品関連の場合は保護対象となる商品・サービスの売上額の最大4%に限られている上、技術・ノウハウの提供期間は5年が上限となる。正当な理由があれば、5年間の延長申請が可能だが、許可される保証はない。国外送金に当たっては、源泉所得税12.5%(二重課税防止条約適用後)のほか、特定財源負担金(CIDE10%など複数の税・社会負担金がかかる。

 

 一方、フランチャイズを展開するためブラジルに単独もしくは合弁で現地法人を設置する場合には、中銀への登録を行えば本国への配当送金に制限はない。このため、長期戦略としては、現地法人の設置も考慮しておく必要があるだろう。

 

(大久保敦)

(ブラジル)

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