銀行の資本規制を緩和し融資余力を創出-イングランド銀行が金融安定化策を発表-

(英国)

ロンドン発

2016年07月12日

 イングランド銀行のマーク・カーニー総裁は7月5日、半期に1回の金融安定報告書を発表し、「英国は不確実かつ大きな経済的調整の局面に入った」との認識を示した。既にEU離脱選択に伴うリスクが表面化し始めており、イングランド銀行として今後、銀行に対する資本規制を緩和することにより、家計や企業に対して1,500億ポンド(約19兆9,500億円、1ポンド=約133円)の融資余力を創出し、金融安定化に努めると発表した。

<国民投票の結果、3つのリスクが表面化>

 イングランド銀行は、金融安定報告書の中で、EU離脱を選択した国民投票の結果を受け、特に3つのリスクが表面化している、と分析した。

 

 1つ目は、急激な外国資金の流出やポンド水準の調整だ。経常赤字が歴史的高水準に達していることによる懸念から、金融市場の脆弱(ぜいじゃく)性が増している。623日から71日までに、ポンドの対ドル相場は9%下落し、英国の銀行の株価は平均で20%下落、英国市場に特化した企業の株価が10%下落した。

 

 2つ目は、英国の商業不動産市場における海外からの資金流入に変化がみられることだ。英国の商業不動産市場は2009年以来、不動産取引の45%を海外からの投資に依存してきたが、2016年第1四半期には海外投資家による投資が前年同期に比べ50%減少し、英国のEU離脱問題で資金の流れが変わり、今後もさらなる深刻な減少が見込まれるとしている。

 

 3つ目は、家計の債務水準の高さだ。失業増や借金の利子増などで家計の脆弱性が高まっており、2009年の150%をピークに下がり続けていた所得に占める家計債務比率が132%程度で下げ止まり、再び上昇に転じる恐れがあるとした。

 

<カーニー総裁は「金融市場は機能」と強調>

 一方、現時点でのプラス面としては、過去8年間にわたり、英国の主要銀行は1,300億ポンド以上の自己資本を積み増しており、金融危機前の3倍以上の流動資産を保有している点を指摘。こうした資本と流動性の上積み(バッファー)が、厳しい時期にも家計やビジネスに継続的な融資を行う柔軟性を与えているとした。カーニー総裁は、「危機的状況下においても、金融市場は機能しており、変化に対応している」と強調した。

 

 金融安定報告書では、不確実性の高まりや長期化に伴う、英国資産に対する海外投資家の関心のさらなる低下による資金流入の減少など、今後のリスク要因を挙げ、金融安定化には緊急的な対策が必要と指摘。こうしたリスクに対応すべく、イングランド銀行は、銀行に予防的に求めている57億ポンドの自己資本の積み増しの延期を決定し、併せて自己資本の上積みの比率を総与信の0.5%から0.0%に引き下げ、これを少なくとも20176月まで継続することも発表した。

 

 英国商工会議所(BCC)は、今回のイングランド銀行の金融安定化策について、「この政治的・経済的な不確実性の時代に、リーダーシップを発揮し、景況感向上に努めている」とし、「カーニー総裁の決定は一時的に銀行の資本規制を緩和し、流動性を高め、ビジネスや消費者にとって重要な融資を維持するのに役立つ。イングランド銀行は特に不況時に金融システムから除外されやすい、創業間もない高成長ビジネスへの融資に対し、引き続き監視しなければならない」とするコメントを発表した。

 

(佐藤丈治)

(英国)

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