ベネズエラ、メルコスール規則の適用期日迫るも手続きに遅れ
(中南米、ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビア)
カラカス発
2016年07月29日
ベネズエラが南米南部共同市場(メルコスール)の規則を国内で承認、適用する期日が迫っている。ベネズエラは2012年8月12日の正式加盟時に、それまでメルコスールが合意してきた規則を4年以内に適用することを約束したが、手続きは遅れている。
<期日までの全規則適用は困難との見方も>
ベネズエラのメルコスール加盟を認める議定書は2006年7月に締結されていたが、パラグアイが批准せず、正式加盟が長い間認められなかった。パラグアイで2012年6月にフェルナンド・ルゴ大統領(当時)が罷免されると、罷免手続きが、メルコスール加盟国が1998年7月に署名した「民主主義順守に関するウスアイア議定書」の民主主義条項に反するとして、2012年6月の第43回メルコスール首脳会議においてパラグアイの加盟資格が一時停止された。同時に、パラグアイを除いたアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイの3ヵ国でベネズエラの正式加盟が承認され、2012年8月12日に正式加盟した。同日付で共同市場理事会(CMC)決定2012年第66号「メルコスール規則のベネズエラ適合予定」(MERCOSUR/CMC/DEC.No.66/12)が発効した。同決定には、過去にメルコスール加盟国が合意し、導入してきた規則を4年以内(2016年8月12日まで)にベネズエラが承認、適用するよう求めている。
ベネズエラが適用しなければならない規則は228の決定(DECISION)、447の決議(RESOLUCION)、85の指令(DIRECTIVA)の合計760ある。そのうち135の決定、67の決議、9の指令は正式加盟前にベネズエラ国内で承認されていた。CMC決定2012年第66号には詳細な合意プロセスが示されており、2013年3月31日までに82の決定、244の決議、75の指令を適用、その後2016年8月12日までに11の決定、136の決議、1つの指令を適用する予定となっている。
しかし、このプロセスは順調に進んでいない。ブラジルのホセ・セーハ外相は、ベネズエラは定められたメルコスール規則を当初の予定どおりには承認できていないと指摘した(ロイター・ラテンアメリカ電子版7月15日)。ベネズエラ投資促進庁(CONAPRI)のエドゥワルド・ポルカレリ代表にジェトロがインタビューしたところ、メルコスール規則は食料品や医薬品の品質、食品容器の安全性、消費者保護、証券市場・市場競争の規則など多岐にわたっており、規則の適用に先立ち関係業界との話し合いが設定されているが、予定どおりに進んでいないという。2012年から2014年まではほとんど進捗がなく、2015年以降は少しずつ進んでいるが、2016年8月12日までに全ての規則を適用するのは困難との見方を示した。また、ほかの加盟国でも適用できていない規則が多数あるとも指摘した。
なお、パラグアイなど一部の加盟国の反対により、2016年7月に予定されているベネズエラのメルコスール議長国就任に遅れが生じている(2016年7月26日記事参照)。
<対外共通関税は導入完了、域内関税撤廃も進展>
ベネズエラは2013年4月からメルコスール加盟国の対外共通関税の導入を進めてきており、2016年4月5日に導入が完了した。
メルコスールの域内関税の導入も進んでいる。ベネズエラのブラジル原産品輸入は原則として無税となる。ただし、経済補完協定(ACE)69号で定められた777品目は2018年1月1日まで例外的に関税を設ける。また、自動車関連品目は両国で個別に交渉するとしており、交渉がまとまるまでACE59号に準じるとしている。ベネズエラ原産品のブラジル向け輸出については、原則として無税となる。自動車関連品目は同様にACE59号に準じるとしている。
ベネズエラへのアルゼンチン原産品輸入については、ACE68号で定められた610品目を除き原則として無税となる。例外品目は2018年1月1日までに関税が撤廃される見込みだ。自動車関連品目および砂糖関連品目のみ個別に交渉することとし、交渉がまとまるまではACE59号に準じる。ベネズエラ原産品のアルゼンチン向け輸出は原則として無税、自動車関連品目および砂糖関連品目は同様にACE59号に準じる。
ベネズエラとウルグアイは、それぞれの原産品は原則として無税だが、アルゼンチンと同様に自動車関連品目および砂糖関連品目は交渉がまとまるまではACE59号に準じる。パラグアイについてはACE64号により、パラグアイ原産品の一部が無税となる。
(松浦健太郎)
(中南米、ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビア)
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