韓国とのFTAが発効-2035年までに関税撤廃-
(コロンビア、韓国)
ボゴタ発
2016年07月26日
コロンビアと韓国の間の自由貿易協定(FTA)が7月15日に発効した。2035年までに関税を撤廃する。コロンビアは、世界の貿易、人口、GDPにおいて年々重要度が高まるアジア太平洋地域に対し、経済連携強化の第一歩を踏み出した。
<アジアと結ぶ初のFTA>
コロンビアは中南米で唯一朝鮮戦争に派兵しており、韓国はコロンビア人に対してビザ免除措置を実施するなど、両国の友好関係は深い信頼に基づいている。2013年に署名された両国のFTAは、それぞれ締結している米国やEUとの間の協定と同様、高度な自由化が定められている。そのため、輸入車の一層の増加を危惧したコロンビアの自動車メーカーが抗議活動を行ったり、同国憲法裁判所が同FTAの批准に関して差し戻し判決を下したりするなど、幾度もの頓挫がみられ、署名から3年を経ての発効となった。
韓国にとってはチリ(2004年)、ペルー(2011年)に次ぐ3番目の中南米諸国とのFTAとなる。一方、コロンビアにとっては初のアジア諸国とのFTAとなり、同国とほぼ同じ人口約5,000万人、かつ、購買力平価(PPP)換算で1人当たりGDPで3万6,000ドル(コロンビアの2.6倍)の所得水準を持つ市場への有利なアクセスを得たことになる。
<農産物の輸出強化に韓国市場を活用>
韓国は「韓国経済再跳躍のための対外経済政策推進戦略(2010~2012年)」において、「資源国とのFTAの積極的推進」を盛り込み、同方針に基づいて、チリ、ペルー、コロンビアと資源ネットワーク重視のFTAが形成されている。
マリア・ラクトゥール商工観光相は「本FTAにより、当地のアグロインダストリーが活発化される」と明言した(「ポルタフォリオ」紙7月15日)。農業分野では、切り花、果実(特にマンゴー、パパイヤ、バナナなどの熱帯果実)、牛肉および同加工品などが韓国市場で需要があるとみており、コロンビア貿易投資観光促進機構(プロコロンビア)の調査では、カカオと同調整品、果肉、コーヒー豆と同加工品、食用油、砂糖なども有望と指摘した。
6月に和平交渉の停戦合意に署名し、「戦後は農業にある」という方針の下、農業の輸出強化にも取り組み、韓国市場もターゲットとする。
このほか、工業品では皮革製品、衣料品、医薬品、化学品などに輸出拡大の余地があるとした。
韓国の主力輸出産品である乗用車の関税(率35%)は10年以内、自動車部品(5~15%)および乗用車用タイヤ(15%)は5年以内に撤廃されることとなった。当地ゼネラルモーターズ・コルモトーレスのホルヘ・メヒア社長は「完全撤廃されるまで10年間は脅威にはならない。また、本FTAの交渉開始から締結までの8年間、発効に備え、顧客に選ばれるための競争力向上に注力してきた」とコメントした(「エル・エスペクタドール」紙7月15日)。
2016年上半期のコロンビア自動車市場では、国内生産のシェアは37.3%、メキシコからの輸入車シェアは19.4%で、韓国からの輸入車シェア14.7%は2015年の16.6%から1.9ポイント縮小している。発効時点では、産業界からの脅威論は低下しており、むしろ消費者にとって、自動車や白物家電がこれまでよりも安価で購入できる恩恵があるという向きもある。
<海路・空路が充実、投資も拡大>
現在両国間は38の海路と14の空路(経由便を含む)で結ばれており、2015年のコロンビアの対韓国向け輸出額(FOB)は2億2,970万ドル、輸入額(CIF)は4億4,297万ドルだった。2010~2015年は2004~2009年に比べ、韓国の対コロンビア投資は約3.5倍に拡大している。現在約40の韓国企業が進出しており、今回のFTA発効によりプレゼンスは高まるとみられる。コロンビア政府はアジアとの経済連携強化を目指しており、日本との経済連携協定(EPA)の早期締結にも期待がかかる。
(安心院茉里)
(コロンビア、韓国)
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