トヨタの「ヴィオス」がCARS補助金を取得

(フィリピン)

マニラ発

2016年07月13日

 トヨタ・モーター・フィリピン(TMP)に対して7月1日、正式に「包括的自動車産業振興戦略(CARS)」プログラムに基づく補助金交付が承認された。同社は小型セダン「ヴィオス」の新モデルでCARSの恩典を利用する。

<「ヴィオス」新モデルに32億ペソの投資を計画>

 CARSは、フィリピン政府がフィリピンで新規に生産される四輪自動車3モデルを対象に、2016年から6年間で総額270億ペソ(約594億円、1ペソ=約2.2円)の支援をするものだ。支援を受けるには、a.6年間で1車種20万台(1車種1年間当たり33,000台以上)の生産を行う、b.部品製造のための新規投資または共用検査施設を設置する、c.重量ベースで50%以上を国産化する、などが要件となる。

 

 トヨタ・モーター・フィリピン(TMP)の2015年の販売実績は125,027台で前年比17.8%と好調だ。同社はフィリピン国内販売シェア39%を占め、首位に立つ。フィリピン国内で生産している主力モデルは「ヴィオス」と「イノーバ」で、2015年度の販売実績はヴィオスが33,173台、イノーバが17,011台だった。2モデルを合わせると、同社のフィリピンにおける販売台数の40%を占める。

 

 6月半ばにTMPは、CARS関連の初期投資として322,000万ペソを投じると発表していた。ヴィオスについては、車体部品、大型プラスチック部品などの生産の現地化を新たにすることで、2014年以降40%を超えた現地調達率を高め、2018年にフルモデルチェンジする計画だ。既に年間販売台数は3万台を超えていることもあり、TMPは、輸出をしなくても国内市場向けの販売だけで、CARSの要件をクリアできるとみている。

 

<車を購入できる所得階層が急成長>

 1人当たりのGDPの拡大に伴い、フィリピンの消費の担い手の構造は徐々に変わりつつある。ヴィオスの販売台数は、2005年の8,358台が2015年には33,173台と4倍弱に拡大しており、特に2013年からの3年間は、連続で20%台を超える増加を記録した(表参照)。TMPが販売する車種の中で廉価なヴィオスの販売は急伸している。TMPの鈴木知社長は「最近のフィリピン市場の伸びは、所得が増加し車を購入できる層が拡大していることが大きな要因と思われる。いわゆる中間層に手の届くモデルの市場構成比が2005年の17%程度から2015年は35%と倍増していることと、当社の調査では、乗用車を購入した人の中で初めて新車を購入する人の比率が、2015年で73%と全体の約4分の3近くを占め、かつ2005年の36%程度からは倍増していることから、フィリピンでは新しい購買層が明らかに急増している」と述べている。

表 TMPの新車販売台数とフィリピンの1人当たりGDPの推移

<現地調達率も向上>

 TMPがフィリピンで生産・販売するモデルで、ヴィオスに次ぐ販売実績を持つイノーバは、20164月にフルモデルチェンジを発表した。当地メディアは、同社が39億ペソを投じ、イノーバ製造ラインを10%増強し、関連して従業員100人を追加雇用する、と報じた。ジェトロが2015年に実施した日系企業に対するアンケート調査によると、フィリピンの現地調達率は平均26.2%と低いものの、上記報道によると、イノーバにおける現地調達率は、今回のモデルチェンジをきっかけに50%にまで向上させており、今後もさらなる現地化を進める意向とみられている。

 

(関悠里、安藤智洋)

(フィリピン)

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