輸送効率向上のためコンテナ化促進が急務-カザフスタン鉄道セミナー(2)-

(カザフスタン、日本)

欧州ロシアCIS課

2016年06月13日

 JR貨物によるカザフスタンの鉄道貨物輸送状況調査によると、同国では主要駅での貨車の仕分けが非効率で、鉄道輸送の定期・定時運行が行われていない。同社は日本の国鉄時代の経験も踏まえ、輸送時間の短縮やコストの削減を実現するため、貨物のコンテナ化促進などを、カザフスタン国鉄に提案している。カザフスタン鉄道セミナー報告の後編。

<貨車仕分けが非効率で定期運行なし>

 201510月に日本の国土交通省とカザフスタンの投資発展省の間で締結された交通分野での協力覚書を踏まえ、JR貨物の子会社であるジェイアール貨物・リサーチセンターが、国交省からカザフスタンにおける貨物輸送改善に関する調査業務を受託した。調査結果の概要について、JR貨物経営統括本部海外事業室の西村公司室長が以下のとおり講演した。

 

 カザフスタンの鉄道貨物輸送の特徴として、輸出貨物は石炭、石油などの原材料が主で、専用貨車が使用され、鉄道が原材料輸送の大きな役割を果たしている。原材料以外の輸出品は有蓋(ゆうがい)貨車が使用される。輸入貨物とトランジット貨物は有蓋貨車もしくはコンテナで輸送されるが、いずれも片道輸送で復路は貨車が空になることが多い。

 

 鉄道輸送上の主な課題として、国内・輸出入の運賃が低く抑えられ、競争原理が働いていない点が挙げられる。他方、トランジット貨物は収支を考慮した自由な価格設定がされている。また、貨車が主要駅のヤード(操車場)で仕分けられるヤード集結方式が採用されている点も課題だ。仕分けられて一定量の貨車がたまるまで運行が始まらないため、定期運行が行われていない。作業が非効率な上、貨物到着時間が不定時となる。アルマトイとモスクワ間のように4,000キロの距離がある輸送には通常なら鉄道が用いられるが、この距離でも到着時間指定の貨物はトラックで輸送されているほどだ。収入も片道分のため、採算ラインが必然的に高くなり、鉄道輸送はトラック輸送に比べて競争力が落ちる。

 

<日本の国鉄時代と似た状況>

 課題を解決するためには、a.貨物の到着時間の明確化、b.運用コストの削減、c.顧客へのサービス向上、が必要だ。その方法として、a.コンテナ化によるヤードでの仕分け作業の廃止、b.列車の定期・定時運行、c.IT化、d.側面が全開放する中型(12フィート)コンテナの導入、が挙げられる。

 

 課題解決を通じて、国内輸送ではトラック輸送に対する競争力を向上させ、トランジット輸送では他の国際輸送ルートとの差別化を図る。この必要性については、カザフスタン国鉄と認識が一致している。

 

 コンテナ化を実現することで、貨車を一つ一つ仕分けするための大きな土地が不要となり、人による仕分け作業から、フォークリフトでのコンテナ載せ替え作業に転換することによって、作業時間を短縮し、貨物到着時間を明確化することもできる。

 

 1975年ごろは日本の鉄道輸送でもヤード集結方式が取られており、各都市の駅で貨車を一つ一つ仕分けしていた。非効率のためトラック輸送との競争に勝てず、鉄道による貨物輸送量は落ち込んだ。これに危機感を持ち、1975年以降、コンテナ輸送への転換を進めていった。1987年の国鉄民営化に伴い発足したJR貨物もコンテナ化を進め、今では輸送量の3分の2、収入の90%をコンテナ輸送が占める。トラック輸送と互角に戦えるようになった。

 

 カザフスタンの現在の鉄道の課題は、日本の国鉄時代と状況が似ている。JR貨物とカザフスタン国鉄は業務効率化や輸送品質の向上などのためのコンサルティング支援について協議中だ。本件に合意した後、詳細調査を行い、改善支援を開始する。2社間だけでなく、日本の国土交通省や各政府機関、カザフスタン投資発展省とも協力して進めていきたい。

 

(浅元薫哉)

(カザフスタン、日本)

ビジネス短信 ffcfad3ffa205ab6