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たばこにプレーンパッケージ規制導入を検討-懸念される他産業への波及-

(マレーシア)

クアラルンプール発

2016年06月29日

 S・スブラマニアム保健相は5月31日、たばこに一切のデザイン要素を排除したプレーンパッケージ規制の導入を検討していると表明した。政府は公衆衛生の改善を目的とした同規制に意義があるとするが、進出日系企業は知的財産権の侵害、違法たばこの拡散、規制の他産業への波及などを懸念している。

<男性のほぼ半分が喫煙者>

 世界保健機関(WHO)は531日の禁煙デーに合わせて、2016年のテーマを「Get ready for plain packaging〔プレーンパッケージ(無地の箱)の準備をしよう〕」に設定した。このWHOの意向に同調するかたちで、スブラマニアム保健相は同日、マレーシアも同規制の導入に向けた準備を進めることを約束した。同保健相は現状のままでは、たばこが本来有害物であるという周知が十分ではなく、特に若者や子供への悪影響が大きいとした。また、マレーシアでは500万人の喫煙者がおり、喫煙率は男性43%、女性が1.4%と言及した。さらに、たばこが原因で毎年2万人が死亡しているとし、喫煙率を2045年にかけて5%を下回る水準まで減らす意向を表明した。

 

 プレーンパッケージ規制とは、たばこのパッケージから一切のデザイン要素を排除する、つまり全ての商品の見た目を同じにする規制で、201212月にオーストラリアが世界で初めて導入した。パッケージ内のブランド名称の字体、色、サイズや位置は政府が全て定め、警告表示の画像・文言・サイズ・位置、個別背景色なども政府が決定権を持ち、企業が自社製品をパッケージでアピールすることが難しくなる。

 

 マレーシアのたばこ規制は厳格で、20091月に政府がたばこメーカーに、製品パッケージに画像付きの警告表示を要求したことに始まる。具体的にはメーカーは箱の前面の40%、背面の60%を警告に充てなければならない。20141月には前面は50%、背面は60%が警告表示とするように規制が強化された。使用言語は、前面がマレー語、背面は英語で表示する必要がある。また、箱の表記に「ライト(light)」「マイルド(mild)」「非常に(extra)」など、購入者に「害が少ないのではないか」というイメージを与える語句は禁止されている。

 

<通商協定違反の可能性も>

 たばこの規制は避けられない世界的な潮流ながら、マレーシアでの本規制導入はたばこメーカーだけでなく他産業にも直接的、間接的に影響を及ぼす恐れがある。産業界から挙がる具体的な懸念要因は以下の3点だ。第1に、知的財産権を著しく侵害し、健全な市場競争を通じた産業の発展を妨げる恐れが挙げられる。プレーンパッケージ規制によって、企業は資金と時間をかけて取得した商標権を用いて市場機会の取り込みを行えなくなる。また、貿易制限的な内容を含む同規制は、ラベリングや包装を含む産品の規格・基準を規制する通商協定の中の、貿易の技術的障害に関する協定(TBT)や知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)に抵触する可能性も出てくる。

 

 第2に、規制は偽造品の製造を容易にし、消費者の混乱を引き起こす恐れがある。偽造品の数が増えれば、喫煙率の低下につながらないだけでなく、たばこに課される物品税収のマイナス要因となり、国家収入の下押し圧力となる。現状でも違法たばこは市場に氾濫している。「マールボロ」や「ダンヒル」といった正規品が117リンギ(約425円、1リンギ=約25円)で売られる中、違法たばこは3リンギで売られている(「エッジ」紙613日)。こうした違法たばこの拡散は、正規メーカーの経営に著しく悪影響を及ぼす。318日には、英国に本拠を置くブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)マレーシアが同国での事業展開を縮小するとし、その一因として違法たばこの存在を挙げた。

 

<インドネシアではアルコールで同様の動き>

 3番目の問題点はWHOがたばこ規制を成功例とし、それを他業界へ拡大することを視野に入れた動きに出ている点だ。近年、WHOはたばこだけでなく、食品、炭酸飲料、アルコールも非感染性疾患の危険因子に指定し始めている。それに合わせて各国も、そうした品目で同様に規制を導入する動きをみせている(表参照)。WHOの動きを受けて、インドネシア政府はアルコール製品のプレーンパッケージ案を検討している(「ジャカルタ・ポスト」紙201475日)。

表 たばこ以外のラベル規制導入に関する各国の動き

 たばこ以外の業種にもプレーンパッケージに類した規制が導入されると、マレーシアに進出している日系企業への影響は格段に大きくなる。そのため、68日にマレーシア日本人商工会議所(JACTIM)は、公衆衛生上、たばこに対する規制には理解を示した上で、前述の3点への懸念を示すとともに、プレーンパッケージ規制導入に当たっては慎重に審議を進めてほしいという内容を記載した意見書を国際貿易産業省(MITI)と保健省に提出した。政府には公衆衛生の保持・増進とビジネス活動を萎縮させないようなバランスの取れた規制づくりが望まれる。

 

(新田浩之)

(マレーシア)

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