自動車の新たな排ガス規制を公布、7月に施行

(メキシコ)

メキシコ発

2016年06月17日

 メキシコ環境天然資源省(SEMARNAT)は6月7日、自動車の排ガス検査に関わる規則を改正することを連邦官報で公布した。排ガスの排出基準が厳しくなったことに加え、検査方法の変更、適用対象地域が大幅に広がったこと、全ての車両に適用されることがポイントだ。7月1日に施行される。

<排ガス規制は厳格化の方向>

 メキシコでは、環境保全の目的により、排ガスの排出基準の厳格化が続いている。排ガス検査は、エンジンをアイドリング状態にして排ガスの排出量を検査する方式「静的検査」と、アクセルを踏み込んだ状態にして排出量を検査する方式「動的検査」の2種類が、各州でそれぞれ採用されていたが、201578日に、実際に車を運転している状態に近い「動的検査」に統一された。しかし検査は、検査官によって基準をクリアしたかどうか判断されるため、金銭を渡して基準をクリアしたことにする行為も横行していたという。

 

 今回の改正では、検査官が検査を行うのではなく、検査のための電子機器を車両に接続して排ガスの排出量を測定し、その排出量データがSEMARNATに送られ、SEMARNATが基準をクリアしているかどうか判断する方式に変更された。電子機器の導入によって、排ガス検査の不正を撲滅するとともに、排ガスの基準量そのものも前回の基準から項目によっては最大で80%程度の削減が求められている。なお、電子機器での測定開始は71日の予定だが、準備が整わない場合には最大で60日遅らせる可能性もあるとしている。

 

 本改正の対象地域はメキシコ市のほか、メキシコ市近郊に位置するメキシコ州、トラスカラ州、プエブラ州、イダルゴ州、モレロス州と、範囲が広がっている。また、これまでの規制対象は自家用車のみだったが、全ての車両が対象(電気自動車とオートバイは対象外)になるため、バスなどの公共交通機関や、運送用トラックも含まれている点もポイントだ。

 

 今回改正された規制については20161231日まで適用されるが、その後にはメキシコ全土に適用される可能性がある(「レフォルマ」紙68日)。

 

 なお現在、メキシコ市で実施されている、ナンバープレートの末尾の数字ごとに運転できない曜日(平日、週1日)が定められていた車両通行規制は630日に終了し、排ガス検査の結果によって付与されるラベルを基準とした運用(注)に戻るが、7月からは順次、同改正で定められたより厳しい基準での排ガス検査を受ける必要がある。

 

2005年以前に製造の車には問題点も>

 今回の改正については、幾つかの問題点も指摘されている。2016年に製造された車両は今後2年間、排ガス検査が免除されることが規定された一方で、2006年以降に製造された車両については、電子機器を用いての排ガス検査が定められている。しかし、2005年以前に製造された車両にはそもそも排出量を測定するための電子機器を挿入する装置がない車両が多いため、これまでと同じ「動的検査」が用いられる。車両が古いほど、排ガスは多くなる。今回、基準が厳しくなっていることを考えると、古い車両に関して排ガス検査における不正が行われる可能性は否定できない。

 

 また、メキシコ市以外の州では、排ガス検査の施設が十分にないため、地方の検査所が混雑することが予想される。さらに、メキシコ市首都圏に比べて渋滞が少ない地方都市にまで厳しい排ガス規制が必要かどうか、については議論が分かれている。

 

(注)排ガス検査の結果、排出量が少ない車両については車両通行規制の対象にならないが、排出量が多い車は規制の対象になる。検査結果はラベルで管理され、交通警察官はラベルを見て通行規制の対象となる車両かどうかを判断する。

 

(岩田理)

(メキシコ)

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