EUとの離脱交渉に向け省庁横断組織を立ち上げ-キャメロン首相が国民投票後初の議会演説-
(英国)
ロンドン発
2016年06月30日
デービッド・キャメロン首相は6月27日、国民投票後初めての議会に臨んだ。閣議で国民投票の結果の受け入れると確認したこと、EU離脱交渉に向けて省庁横断で組織を立ち上げることなどを明らかにするとともに、スコットランドや北アイルランドなどの地方政府と緊密な連携を図ることなどを説明した。
<広がる不安感の払拭に努める>
6月27日、国民投票後初めての議会が招集された。キャメロン首相は演説で、まずEU残留・離脱の是非という極めて重要な問題を国民投票に付託したことについて、政治に任せるのでなく国民の声に耳を傾けるほうが正しい判断だと、その正当性を主張した。そして、EU離脱は自らが望んでいたものでも、この国にとって最良の選択でもないが、結果は結果だとして受け入れる姿勢を示した。また、議会に先立って開催された閣議で、国民投票の結果を忖度(そんたく)し、最善のかたちでこの決断が実行されるよう準備に着手することで合意したと説明した。
キャメロン首相は、国民投票後に続いている混乱の沈静化も呼び掛けた。移民排斥の動きが目立っていることに関しては、これまで英国経済の発展に移民が貢献してきたことを強調した。また、在英のEU国籍者や在EUの英国民の地位、ヒト・モノ・サービスの移動の自由などが直ちに喪失するという不安が広がっていることに対しても、当面現状に変更はないとした。さらに、英国の経済環境への懸念が広がっていることから、中央銀行のイングランド銀行や財務省から発表されている経済対策を繰り返し説明し、英国の財務構造の健全性を訴えた。
しかし、それにもかかわらず大手格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)やフィッチ・レーティングスが6月27日に、英国債の格付けを相次いで引き下げるなど、英国市場の先行きへの懸念は拭えない状況にある。
キャメロン首相は、EU離脱交渉の準備に向け、新たな組織を立ち上げることを明らかにした。これは、内閣府、財務省、外務省、ビジネス・イノベーション・職業技能省の省庁横断組織で、任務はここ数十年の政府業務の中で最重要となることから、あらゆる英知を結集させる、と意気込みを語った。
<スコットランド政府などと緊密な連携>
英国のEU離脱問題が、スコットランドの英国からの独立や、北アイルランドとアイルランドの関係性などの問題に波及する懸念が生じる中、キャメロン首相は、EUとの交渉はこれらの地方政府も参加するかたちで行うと説明し、既に各地方政府首脳とは緊密に連携を図っていると強調した。
新たに構築が必要となる外国との経済関係については、引き続きEU加盟国が重要になるとした上で、北米や英連邦(コモンウェルスの国々)、インド、中国などとの連携にも意欲を示した。
(佐藤央樹)
(英国)
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