キャメロン首相が辞意を表明-国内政治は不安定化-
(英国)
ロンドン発
2016年06月25日
国民投票の結果を受けてキャメロン首相は6月24日に記者会見し、辞意を表明した。EU離脱という国民投票結果は、首相辞任にとどまらず、労働党の内紛やスコットランドの独立問題にも飛び火し、国内政治は不安定化しつつある。
<10月までに次期首相を選出>
キャメロン首相は会見で、「英国のEU残留が最善と考えてきたものの、英国民ははっきりと異なる道を選択した。英国はこの方向(EU離脱)に向けて新しい指導者が必要だと思う」と述べ、首相を辞任する意向を表明した。そして、10月の党大会までに次期首相を選出するとして、それまでは続投するとした。EUとの新しい関係については、新体制下で交渉していくべきとして、EU基本条約第50条(注)に基づくEU脱退の正式な手続きもそれまでは行わないとの考えを示した。
離脱派のキャンペーンを率いた前ロンドン市長のボリス・ジョンソン下院議員(保守党)らもその後、会見を行い、キャメロン首相の辞意表明に敬意を示すと同時に、「直ちにEU基本条約第50条を行使する必要はない」としてEU脱退の手続きを急がない考えを示した。離脱によって英国の結束が弱まるわけではなく、また英国は欧州の一部であり、将来にわたり欧州人として、大陸を行き来し、言語や文化を尊重し合うことにも変わりはないと強調した。英国は欧州の主要な勢力として、防衛や外交政策において議論をリードし、世界をより安全にするための役割を続けていくと表明した。
<労働党内に党首不信任の動き>
一方、残留派としてキャンペーンを行ってきた最大野党労働党のジェレミー・コービン党首は「EU基本条約第50条を今すぐ行使すべき」との考えを示した。また、英国は今後、非常に不安定な状況に置かれることから、労働党として、議会での活動を通じて事態の安定化に貢献していくとの意向を示した。しかし、労働党内では国民投票について、マーガレット・ホッジ議員がコービン党首について「あまりに遅くに出てきて、キャンペーンにも気持ちが半分しか入っていなかったことから、労働党員にメッセージが伝わらなかった」と、残留という結果を残せなかった責任を取るべきだとして、コービン党首の不信任投票の実施を提案するなど、野党にまで影響が及んでいる。
<スコットランド独立問題も再燃か>
また、スコットランド政府のニコラ・スタージョン第1首相(スコットランド国民党党首)も6月24日に会見を行い、スコットランド経済を守るため、英国政府がEUと行ういかなる交渉にも関与していく意向を表明した。また、今回のEU離脱という結果によって「2014年の(スコットランドの英国からの独立を問う)住民投票の時とは状況が変わった」として、英国政府を介さずEUと直接の協議を行いつつ、再度の住民投票の実施も選択肢の1つとして検討していくとの考えを示した。
(注)EUからの脱退手続きを規定する条文。
(佐藤丈治)
(英国)
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