IoTやコネクテッドカー分野のビジネス拡大に期待-都内で日本・フィンランドビジネスセミナー開催-

(フィンランド、日本)

欧州ロシアCIS課

2016年06月17日

 ジェトロは5月18日、フィンランド大使館商務部と共催で、モノのインターネット(IoT)やコネクテッドカー分野における企業連携強化を目的とした日本・フィンランドビジネスセミナーとネットワーキングイベントを東京都内で開催した。日本の企業関係者約130人、フィンランドの企業約20社が参加し、活発な交流が行われた。

<両国に共通するイノベーション重視の考え>

 フィンランドの訪日企業団は、IoTおよびコネクテッドカー〔情報通信技術(ICT)端末としての機能を有する自動車〕分野の先進企業で構成され、同分野での日本とフィンランドの企業連携強化を目的としてイベントが開催された。

 

 ジェトロの石毛博行理事長は開会のあいさつで、世界経済フォーラムが毎年発表する「国際競争力ランキング」のイノベーション分野で両国はともにトップ5に入り、イノベーションを重視する共通概念があると紹介。サプライヤーと緊密に連携した研究開発を得意とする日本の自動車メーカーと、自動車のIoTに特化したコネクテッドカー技術を持つフィンランド企業の協業促進とフィンランド企業の対日投資促進に期待を示した。

 

 フィンランドのオッリ・レーン経済相は、デジタル経済分野は政府が戦略的アジェンダに掲げる重要な分野だとし、第5世代移動通信(5G)技術はIoT技術やビッグデータ分析、モビリティーなどの分野で多くの機会を創出すると述べた。フィンランドはICT先駆者として通信技術でヒトをつないできたが、今後はモノをつなぎ、つないだモノの間の通信を促進していきたいとして、フィンランドには日本を含む海外顧客企業の製造・サービスの付加価値向上に資する技術を提供できる力があることを強調した。また、欧州最大規模のスタートアップ企業向けイベント「スラッシュ」を毎年開催するなど、国内には旺盛なスタートアップ文化があり、同イベントのアジアで2回目の開催となる「スラッシュ・アジア」が5月に東京で開催されたことを紹介した。加えて、日本は国内市場の大きさだけでなく、国際化の拠点として重要な機能を果たしているとして、フィンランドと日本の互恵的な協力関係の構築に期待を寄せた。

 

5G技術で日本企業との連携進む>

 ノキアのコーポレート部門副社長ミンナ・アイラ氏は「当社は150年の歴史の中で革新を続け、ヒト・モノを技術によってつなげてきた。5G技術によってさらなる革新を続けていく」と述べた。全ての業界が5Gの影響を受けるとして、工場全体を人工知能(AI)で管理する生産システムの例を紹介、人々は5G技術により毎日2時間節約できるようになることや、交通事故の減少などの恩恵があることを紹介した。さらに、5Gに関して日本企業との連携が進んでいるとし、ノキアは2020年の東京五輪までに5G導入の準備ができていることを日本企業に示したい、と話した。

 

 フィンランド投資庁からは、同国におけるIoT、コネクテッドカー、ICT分野などの現状や日本企業の事業機会に関する説明、フィンランドの訪日企業団の紹介が行われた。

 

 シニアアドバイザーのキンモ・オユバ氏はフィンランドのICT、デジタル化領域について説明、「クラッシュ・オブ・クラン」や「アングリーバード」など著名なゲームを生み出してきたゲーム業界や、暗号化技術やデータ機密性などサイバーセキュリティークラスターの強みを紹介した。さらに、科学者やエンジニアが豊富なことや、政府のデジタル経済促進政策により大学や研究開発(RD)の基金へのアクセスが容易なことなど投資環境の魅力を紹介し、こういった支援はフィンランドに拠点を持つ外国企業にも適用されることを強調した。また、小国であるがゆえにフィンランド企業はスタートアップさえも世界に目が向いているとして、日本とフィンランド企業との協業に期待を寄せた。

 

 セミナー後のネットワーキングイベントでは、多くの日本企業とフィンランド企業が製品・技術について情報を交換するなど、同分野に対する関心の高さがうかがわれた。

 

(深谷薫)

(フィンランド、日本)

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