外資の拠点設置を金融センターなどが支援-カタール・ビジネスセミナー(1)-

(カタール)

ドバイ発

2016年06月21日

 カタール金融センター(QFC)とジェトロは5月31日、ドバイでカタール・ビジネスセミナーを開催した。セミナーではカタール政府機関および在ドーハ日系企業などが、同国のビジネス機会について説明した。講演の内容を2回に分けて報告する。

<日本企業の積極的な参画を期待>

 カタール・ビジネスセミナーには、日本企業から61人が参加し、同国市場への参入や拡大について情報収集を行った。

 

 セミナーに先立ち、あいさつしたカマル・ナギQFC副総裁は、日本とカタールはこれまで良好な2国間関係を続けており、カタール国民の日本企業や製品に対する評価は高いとし、2022年のサッカー・ワールドカップ(W杯)開催をはじめとした今後のカタールのインフラ需要と経済発展において、日本企業の積極的な参画を期待する、と述べた。また、ジェトロ・ドバイ事務所の安藤雅巳所長も開会あいさつを行い、在ドバイ日本総領事館の道上尚史総領事が来賓あいさつをした。

 

<膨大なインフラ需要、多角化を目指す産業>

 セミナーでは、まずQFCアジア地域ビジネス開発部門のジャホン・ブルホノフ代表がカタール市場の魅力とQFCのサービスを紹介した。カタールは豊富な天然ガス資源に加え、1人当たりのGDP75,000ドルという高い購買力や、W杯開催に向けた膨大なインフラ需要が存在する。特にW杯に関しては、スタジアム建設に40億ドル、ホテルなど居住施設に120億ドル、メトロや高速道路、空港整備といった輸送関連投資に710億ドルなど、多くのビジネス機会が見込まれる。また、石油・インフラのみならず産業多角化に取り組んでおり、長期国家開発計画「カタールナショナルビジョン2030」では経済・人材・社会・環境の4つの開発に力を入れている。

 

 外国企業がカタールに拠点を設ける場合、QFCの認定を受けることで、100%単独資本での拠点設置、各種手続きのQFCへの一元化(ワンストップショップ)、アラビア語でなく英語での手続き実施などの恩恵が受けられる。支援対象には金融セクターのほか、会計・法律事務所などのサービス業やメーカーなどの地域統括拠点も含まれる。中東各国にみられるフリーゾーンと似た制度であるものの、QFCスキームで活動する企業はオンショアとなり、国内で営業などの活動を行うことも可能だ。

 

3つのSEZ設置を予定>

 続いて、経済区会社「マナテック」のプランニング・リスクマネジャーのオサマ・アルモマニ氏が、今後設置が予定されている同国の特別経済区(SEZ)について紹介を行った。SEZ入居企業は、企業登録、土地取得、ビル建設許可、ビザ取得、税の支払いについて、マナテックがワンストップショップとしてサポートするという。

 

 カタールには現在、3つのSEZが計画中だ。ラス・ブフォンタスSEZはハマド国際空港近くに位置し、敷地面積は約4平方キロで、2018年から2019年にかけて工事が終了する予定だ。輸送、高度技術、ヘルスケア、軽工業、航空分野をターゲットとしている。ウム・アルホウルSEZはハマド港近くに設置され、敷地面積は約34.3平方キロ、2018年から2022年ごろにかけてサービスが開始される。ターゲットは金属加工、建設、港湾、食品および飲料、輸送、石油化学分野としている。アル・カラアナSEZ3つのうち最大の38.49平方キロで、サウジアラビア国境に近いため、湾岸協力会議(GCC)諸国市場へ陸のゲートウエーを目指している。建設資材、プラスチック、輸送、化学、金属、一般製造業をターゲットとしている。

 

 オサマ氏は「これらSEZの法律や運用はまだ確定していないが、ウェブサイトで情報を提供している。また、問い合わせてもらえば、より詳細な情報提供を行う」と話した。

写真 61人が参加したカタール・ビジネスセミナー(ジェトロ撮影)

(水野光)

(カタール)

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