三菱自動車が政府の自動車産業支援案件の第1号に

(フィリピン)

マニラ発

2016年06月27日

 三菱自動車の生産・販売現地法人であるミツビシ・モーターズ・フィリピンズ・コーポレーション(MMPC)が、「包括的自動車産業振興戦略(CARS)」に基づくフィリピン政府支援案件の第1号として承認を受けた。今後6年間の合計で、小型車「ミラージュ」(ミラージュG4を含む)を20万台生産する計画だ。

6年間で「ミラージュ」20万台生産が目標>

 20155月の大統領令に基づく包括的自動車産業振興戦略(CARS)は、同年12月に施行細則が発表された後、日系自動車メーカーの2社、トヨタ・モーター・フィリピン(TMP)、ミツビシ・モーターズ・フィリピンズ・コーポレーション(MMPC)が支援案件としての承認申請を行っていた。

 

 承認が政権交代後に持ち越された場合、計画の遅延も懸念されていたが、20166月上旬に、地元メディアが両案件は近日正式に承認されると報じた。政府は、615日付でMMPCの申請が第1号の案件として承認した。TMP案件についても、正式承認が近いとみられる。

 

 報道によると、MMPC2017年早期の操業を目指し、フィリピン工場での小型乗用車「ミラージュ」生産ライン設置のため、今後約43億ペソ(約95億円、1ペソ=約2.2円)を投資する計画。この中には、20億ペソのスタンピング設備投資も含まれる。また、CARSが要求する「6年間で20万台生産」の目標を達成するため、シフトを追加することで、工場の生産能力を強化する方針も示された。

 

MMPCの販売台数は約10年間で4.3倍に拡大>

 MMPC1月の報道向け資料で、2016年の販売目標を67,800台としている。第1四半期の実績は14,688台で、前年同期比で21.6%増加した。特に2月は前年同月比33.1%増と好調だった。また、同社の2015年の年間販売台数は54,087台で、2006年実績の4.3倍に拡大しており、フィリピン自動車市場の勢いの一端を表す数字となっている。

 

 近年の特徴として、商用車〔スポーツ用多目的車(SUV)などの軽商用車も含む〕との比較で乗用車の販売の伸びが目立つ。MMPCによると、同社の2015年の乗用車販売台数は前年比35.5%増となり、フィリピン全体の乗用車販売台数の増加率を上回っている。

 

 乗用車、特に小型車の販売増は、富裕層による2台目需要が中心で、新規の自動車ユーザーの増加は少ないのではないか、との指摘が以前にはあった。しかし、MMPCの加藤芳明社長は「MMPCの場合、乗用車の販売増加は主として小型の『ミラージュ』(ハッチバック)と『ミラージュG4』(セダン)によるものだが、両モデルについては、若年層や中間所得層を中心に1台目として買う割合が増加傾向にある」とする。

 

 フィリピンの自動車市場は、2013年の20万台突破から2年後には30万台を超え、勢いをみせている。自動車を購入できる所得階層に、変化が起きつつあるのかもしれない。

 

(安藤智洋)

(フィリピン)

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