WTO政府調達協定に加入-内外無差別の原則導入-

(ウクライナ)

欧州ロシアCIS課

2016年05月30日

 ウクライナは5月18日、WTO政府調達協定(GPA)に正式加入した。一定金額以上の物品・サービス・建設に関する公共調達案件について内外無差別などの原則が適用される。ウクライナの公共調達案件に日本を含む外国企業の参画が進むことが見込まれるほか、ウクライナ側も輸出増の効果に期待を寄せている。

<手続きの簡素化や差別措置撤廃ルールを強化>

 GPAは、WTO加盟国のうち同協定を締約した国・地域に適用される複数国間協定。締約国・地域には今回加入したウクライナのほかに、日本、米国、EU加盟28ヵ国、韓国など45の国・地域が含まれる。締約国は、他締約国の産品や供給企業に対し、政府機関などによる物品・サービスの調達のうち一定の基準額を超える案件において、内国民待遇の原則や無差別待遇の原則を適用しなければならない。例えば、公共調達の入札の要件として、ウクライナ国内に拠点があることや、物品などの国内調達の義務付けができなくなる。

 

 同協定は20144月に改正され、a.電子調達を含む手続きの簡素化、b.差別的な措置を撤廃するためのルールの強化などが新たに盛り込まれたが、ウクライナにもこの改正内容が適用される。

 

 ウクライナにおいてGPAの対象となる調達機関や基準額は、WTO公共調達委員会の決定第GPA133号に定められている(表参照)。基準額はSDRIMFの特別引き出し権)建てで設定される。各国の現地通貨建て金額は、直近2年間の対SDRレートの平均値を用いて算出され、2年ごとに見直される。

政府調達協定(GPA)の対象となる基準額および主な対象機関

<ウクライナは日米欧などへの輸出増を期待>

 ウクライナの公共調達案件において外国企業の参入可能性が広がるほか、ウクライナ企業の海外での公共調達受注の機会が増える可能性もある。経済発展商務省の資料によると、これまで主に東欧での公共調達案件でウクライナ企業の落札実績がある。2013年にはDKウクライナがポーランドで会計監査サービス、リビウ・バス工場(LAZ)がブルガリアでバスを受注している。同省はGPA加入日の518日に声明を発表、「ウクライナ企業がGPAに参加するEU、日本、米国など45ヵ国・地域の公共調達に参加できる権利を持った。同市場規模は17,000億ドルに上り、2014年のウクライナの輸出額の30倍超に相当する」と輸出増に期待を示した。

 

 ウクライナのGPA加入については、同国が2008年にWTO加盟した際の約束に含まれていた。201511月にWTOの政府調達委員会でウクライナの加入が承認され、ウクライナで201647日にGPA批准に関する法律(2016316日付ウクライナ法第1029VIII号)が成立した。これを受け、ウクライナ政府は418日にGPA加入に関する文書をWTO事務局に提出、1ヵ月後の518日に正式加入が実現した。

 

(浅元薫哉)

(ウクライナ)

ビジネス短信 d0ab46023805d967