メルコスールとSACUの特恵貿易協定が発効-ブラジルは工業製品の輸出活性化に期待-

(ブラジル、南アフリカ共和国)

サンパウロ発

2016年05月18日

 南米南部共同市場(メルコスール)と南部アフリカ関税同盟(SACU)の特恵貿易協定が4月1日付で発効した。農産品や工業製品などを含む2,000品目超が関税低減の対象となる。工業製品の輸出促進を目指すブラジルは、協定締結により双方のさらなる貿易活性化に期待を寄せている。

<メルコスールとSACU合わせ2,102品目の関税低減>

 本協定では、メルコスール側で1,076品目、SACU側で1,026品目が関税低減の対象となる。品目により10%、25%、50%、100%の軽減税率が適応される(注)。SACUはボツワナ、レソト、ナミビア、南アフリカ共和国、スワジランドの5ヵ国から成る関税同盟で、本協定は5ヵ国全てが対象。メルコスールは現時点でブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ベネズエラ、ボリビアの6ヵ国だが、本協定ではブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイの4ヵ国のみが対象となる。そのメルコスール4ヵ国とSACUの特恵関税協定は2003年に交渉がスタートし、20084月に交渉が終了していた。メルコスール側が200812月に開催されたメルコスール首脳会議で文書に署名し、SACU側も20094月に署名済みだったが、加盟各国議会での承認待ちとなっていた。

 

 うちブラジルとSACU間の往復貿易額をみると、ピーク時の2012年は264,500万ドルで、その後減少しているが、2015年はブラジル国内の経済後退にもかかわらず、前年比1.1%増加している(添付資料の表1参照)。開発商工省(MDIC)のプレスリリース(45日)によると、20122014年におけるブラジルからSACUへの輸出額のうち、本協定の対象品目が輸出額全体の約11.0%(15,000万ドル)を占めており、さらなる貿易活性化が期待される。

 

 ブラジル外務省によると、今後は農産品に加えて、化学製品、繊維製品、鉄鋼製品、プラスチック製品、自動車関連製品、電気電子機器、資本財などの輸出増加が見込めるという。特に、工業製品輸出の増加に期待をかけている。2015年の輸出額全体のうち、3分の2に当たる9500万ドルが工業関連製品だったからだ。

 

<貿易額が大きい南ア向け>

 政府は、景気低迷による内需の縮小から付加価値の高い工業製品などの輸出増加を目指すため、20156月に輸出促進計画を発表している(2015年7月8記事参照)。その中で定めた32の重点国の中にSACUを構成する南アも含まれている。同計画によると、南アへは、食料品、飲料や農産品の分野が多く輸出されており、今後も同分野の輸出品目を増やすのに加えて、航空機、機械およびモーター、完成車および自動車部品、機械設備などの輸出開拓にも乗り出す。さらに、関税低減の対象品目を増やすことも目標に掲げている。

 

 SACUの中でブラジルと最も貿易額の大きい南アは、ブラジルにとって輸出相手国として36位(2015年)。ブラジルは、開発商工省がデータを公表している2000年以降、貿易黒字を維持している。また、2014年以降はそれまで輸出額が最も大きかった鶏肉に代わり、セミトレーラー用の道路走行用トラクターが最大品目になったことなどから、工業製品輸出促進を狙うブラジルは期待を寄せる(添付資料の表2参照)。

 

 ブラジルは近年、積極的に諸外国との協定締結を進めている。中央銀行の週次レポート「フォーカス」(56日)によると、2016年のブラジルGDP成長率予測はマイナス3.9%と、2015年から2年連続のマイナス成長が見込まれている。内需が縮小する中、201510月にコロンビアと自動車の無関税輸入枠を設け、ウルグアイとも自動車・同部品について20161月に貿易を自由化した(2016年4月6日記事参照)。ペルーとは20164月に、自動車分野も含む、政府調達、サービス、投資分野などに関する2国間協定を締結した。2000年から協議を開始しているEUとの貿易協定も、201512月に開催されたメルコスールの首脳会議で交渉継続が確認されている。

 

(注)特恵関税の品目は201641日付法令8703に記載。

 

(辻本希世)

(ブラジル、南アフリカ共和国)

ビジネス短信 82869cf2966de409