広東省、特許と商標の出願数が28%、26%増加

(中国)

広州発

2016年05月25日

 広東省政府新聞弁公室は4月25日、2015年の知的財産権保護に関する記者会見を広州市内のホテルで開催した。会見では広東省知識産権局、広東省工商行政管理局などの責任者が、広東省における2015年の知的財産権の登録と保護の状況および特徴などについて報告した。

PCT国際特許出願数は14年連続で全国一>

 広東省知識産権局の馬憲民局長によると、広東省企業については、特許(中国では実用新案権、意匠権を含む)出願、特にPCT国際特許出願(注1)による登録が非常に多いという特徴がある。PCT国際特許出願の世界トップ50のうち、5社が広東省企業で、2014年と同じく深セン市に本社がある華為技術(ファーウェイ)が世界1位、中興通訊(ZTE)が3位となった。2015年の広東省のPCT国際特許出願は15,190件で、全体(28,399件)の53.5%を占め、14年連続で全国トップだ。

 

 広東省における2015年の商標出願数は前年比26.2%増の512,877件、登録数は77%増の395,539件だった。2015年末の累計で、商標の有効登録数は1659,000件に達し、全体の18%を占め、21年連続全国トップだった。

 

 一方、特許の出願数は前年比28%増の356,000件、登録数は34%増の241,000件となり、2014年の出願数(5.3%増)と登録数(5.6%増)に比べ、いずれも伸びが大きくなった。中でも、発明特許権は出願数が38.3%増の103,941件、登録数が50.3%増の33,477件で、特に登録数が大幅に増えた。うち、広東省における有効な発明特許数(注2)は24.1%増の139,000件で、6年連続で全国トップとなった。また、広東省の人口1万人当たりの発明特許保有件数は12.8件で、全国平均値(6.3件)の2倍だった。

 

<各行政機関が模倣品を摘発>

 広東省工商行政管理局による取り締まりについては、2015年は計3,974件が商標権侵害案件として摘発され、摘発額は3,600万元(約61,200万円、1元=約17円)相当で、罰金額は4,893万元に上り、35件が公安機関へ移送された。

 

 また、粗悪品の製造に対する取り締まりについて、質量技術監督局が力を入れており、キッチン用品、アパレル品、肥料などの10品目を重点とした。これにより、計4,349件(金額で24,400万元)、167ヵ所の製造拠点が摘発され、罰金額は9,339万元に達し、さらに29件が公安機関へ移送された。また、2013年に所管が工商行政管理局や質量技術監督局から食品薬品監督管理局へ移管された、食品と薬品分野における模倣・粗悪品の取り締まり状況についても報告があり、28,415件、1,428ヵ所の製造拠点が摘発され、うち1,667件が公安機関へ移送された。

 

<税関でも取り締まりを強化>

 2015年に広東省内の税関は、権利侵害案件を1,602件摘発し、権利侵害が疑われる貨物を2,953ロット押収した。権利を侵害した貨物は1,905万件に達し、輸出先は93ヵ国・地域に及び、品目は通信設備、アパレル、靴などに集中した。税関は効果的な取り締まりを実施するため、権利侵害案件の特徴をまとめ、侵害リスクが高い品目への監督を強化してきた。2015年にリスク分析(注3)により摘発された貨物は1,317万件に達した。

 

 また、近年増加している海運、小口郵便、インターネットなどでの権利侵害に対しては、税関総署の主導によって、海外での「中国製造」のブランドイメージの保護を目的とした「清風行動」(20152017年)を全国の各税関で実施中だ。広東省内の各税関はこうした重点チャンネルと重点貨物への監督を強化し、2015年は1,723万件の輸出貨物を摘発した。

 

<国際協力により知財権の集積を図る>

 馬局長は会見で、日本のIIPPF(注4)などが2016114日に実施した知的財産保護官民合同訪中代表団(実務レベル)の活動や、米国特許商標局とのセミナーなども紹介した。

 

 中国政府とシンガポール政府の間では、知財分野で初の国家戦略協力プロジェクトが進行中だ。「中新(中国・シンガポール)知識城における知的財産権の活用および保護に関する試験地を発展する実施法案」が中央政府に承認され、間もなく中新広州知識城(知的財産開発区)に、北京に次ぐ特許審査協力センターが設立される201541日記事参照)。また、中国政府は広州知識産権法院、広州知識産権交易センターなどを最終的に設置することで、知的財産権に関わる申請、融資、取引、学習などのソフトサービスをワンストップで提供できる知的財産関連新区の設立を計画している。

写真 記者会見の様子(ジェトロ撮影)

(注1PCTは特許協力条約(Patent Cooperation Treaty)。これに基づく国際出願は、1つの出願書を提出することで、PCT全加盟国に同時に出願できる制度(出所:特許庁ウェブサイト)。

(注2)報告取りまとめ時点で、特許権が利用された状態にある発明特許を指す。

(注3)中国の各税関が使用している模倣品の識別手法を指す。物流監視システムやデータなどを各税関で共有することで、通関管理業務の効率化を実現している。

(注4IIPPF(国際知的財産保護フォーラム、事務局:ジェトロ)には、海外における模倣品・海賊版など知的財産権侵害問題の解決を目指す日本国内の企業・団体が加入している。

 

(謝暁儀、金光)

(中国)

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