BtoC中心の戦略で売り上げは堅調に推移-南部フリーゾーンのソーナウストラル社長に聞く-

(チリ)

サンティアゴ発

2016年05月31日

 チリには4ヵ所のフリーゾーンがあり、最も南に位置しているのがマガジャネス州プンタアレナスにあるソーナウストラル(ZonAustral)だ。着実な成長を続ける要因などについて、社長のエウヘニオ・プリエト氏に話を聞いた(4月26日)。

<南部地域ビジネスのプラットホーム>

 ソーナウストラルは、マガジャネス州やチリ南部地域の経済活性化を目的に、パタゴニア地域のビジネスのプラットホームとして1977年に設立された。北部イキケなど他のフリーゾーンと同じく、入居企業は20%の法人税(第1種カテゴリー税)と19%の付加価値税が免除される。また、貨物がフリーゾーン内にとどまっている間は、関税の支払いも不要だ。ただし、鉱業、漁業、金融サービス業の企業は適用対象外となっている。

 

 フリーゾーン内では、貨物の保管、展示、梱包(こんぽう)、開梱、ラベリング、仕分け、再梱包、販売のほか、製造もできる。外国貨物をフリーゾーン外に持ち出す際は通常の輸入と同じ扱いになり、関税を支払う必要があるが、マガジャネス州、アイセン州、ロスラゴス州のチロエ県とパレナ県に貨物を運ぶ場合は、ソーナウストラルが拡大フリーゾーンと位置付けられているため、CIF価格の0.52%のみが賦課される。

 

2015年は過去最高の売り上げを記録>

 ソーナウストラルの入居企業数は2015年時点で924社で、輸入販売のみを行っている。イキケなど他のフリーゾーンに比べれば規模は小さいものの、売上高は堅調に伸びており、2015年は過去最高の3,010億ペソ(約482億円、1ペソ=約0.16円)だった(図参照)。売り上げを伸ばしている要因として、BtoCビジネス中心のフリーゾーンであることを意識した戦略を取っていることが挙げられる。例えば、スケートリンクを開設したり、各種イベントを開催したりして訪問者数の増加につなげ、フリーゾーン内の店舗の売り上げ増に貢献している。訪問者数は着実に増加しており、2015年は約1,000万人と過去最高を記録した。今後も、映画館やボーリング場など施設のさらなる充実を図っていく考えだ。

図 売上高の推移

 現在の入居企業は、ほとんどがチリ企業だ。外国企業としてはアルゼンチンや米国のエネルギー関連企業が入居しているほか、日本企業も家電や自動車メーカーが数社入居している。また、フリーゾーンでのビジネスチャンスを求めて移住して来たインド人が経営する企業も入居しており、中国や日本、米国製の家電、自動車、衣類などを販売している。

 

<消費者の購買力の高さが魅力>

 ソーナウストラル内には、新車や中古車のディーラーもある。全体で月々700台ほど売れるが、その約35%は中古車だ。なお、中古車は日本や韓国製が人気で、中国製は中古車より新車の方が売れている。価格帯としては、7,000ドルから8,000ドルの中古車が売れ筋だ。

 

 他のフリーゾーンと比較して、消費者の購買力の高さが魅力として挙げられる。マガジャネス州はガスや石油開発関連企業の従業員が多く、所得水準は鉱山労働者の多いアントファガスタ州と並んで最も高い。チリではエネルギーや工業部門の給与が比較的高水準だ。

 

 ソーナウストラルはさらに入居企業を増やそうと、イキケやパナマのコロンなど中南米の主要フリーゾーンを訪れ、入居企業に対して勧誘を行っている。外国企業にとっては、最初の中南米進出先としてソーナウストラルを選ぶことは難しいかもしれないが、既に中南米に進出している企業が横展開をする際の進出先候補になり得るとみている。

 

(佐藤輝美)

(チリ)

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