上院が大統領弾劾裁判の開始を決定-ルセフ大統領が最大180日間の職務停止に-

(ブラジル)

サンパウロ発

2016年05月13日

 上院本会議で5月11日、ジルマ・ルセフ大統領の弾劾裁判開始に関する採決が行われ、翌12日に可決された。ルセフ大統領は、大統領の職務が停止された。暫定的に大統領職を代行するミッシェル・テーメル副大統領は、経済再生を最優先課題に掲げている。

<賛成55、反対22で可決>

 上院本会議で、賛成55、反対22で弾劾法廷が設置されることが決定した。今後、上院議会で大統領弾劾審議が開始される。ルセフ大統領は審議が終了するまで最長180日間職務停止となり、その間テーメル副大統領が職務を代行する。ルセフ大統領は、20181231日の任期満了まで戦い続けることをあらためて主張したが、連立与党から離脱する政党が相次ぎ、国内経済も改善の兆しがみえない中、立場は非常に苦しい。

 

<経済再生を目指す暫定政権>

 決定には出席議員の過半数以上の賛成が必要だったが、採決前から賛成を表明する議員が多く、既に国民の関心はテーメル氏の政策に集まっていた。当地報道や同氏所属のブラジル民主運動党(PMDB)の公式ウェブサイトによると、経済再生を最優先するため、失業率の改善、インフレ抑制や財政健全化などを目指す。具体的には、財政赤字が膨らむ中、公費支出削減のため省庁再編を図り、閣僚を10ポスト減らす。また、財政赤字を招く大きな要因となった社会保障費を削減することなどを提案している。

 

 スタートした暫定政権に関しては、2006年から2010年まで、ルーラ前大統領政権下で中央銀行総裁を務めたエンリケ・メイレーレス氏を蔵相に起用したり、主力野党のブラジル社会民主党(PSDB)に所属するジョゼ・セーハ氏を外相にしたりするなど、注目されている。メイレーレス氏は中銀総裁在任中、インフレ抑制に貢献し、外貨準備高の増加やリーマン・ショックを乗り切り、その手腕には定評がある。セーハ氏はルーラ政権下の2007年から2010年までサンパウロ州知事を務め、第1期および第2期カルトーゾ政権下で予算企画相、保健相を歴任するなど経験は豊富だ。

 

 弾劾法廷は今後、審議の後、投票が行われ、上院議員の3分の254議席)以上の賛成をもって大統領失職となり、その後8年間は公職に復帰できないことになる。そうなると、副大統領が正式に大統領に任命され2018年末までの任期を全うする。賛成が54人未満の場合ルセフ大統領は復職できる。180日以内に弾劾法廷の判決が出ない場合は、裁判が継続したままルセフ大統領が復職することになる。

 

(辻本希世)

(ブラジル)

ビジネス短信 1101324f7d0aa3f3