6割超の日系企業が事業拡大の方針-2015年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査(1)-

(ベトナム)

ハノイ発

2016年04月08日

 ジェトロのハノイ、ホーチミン両事務所は3月3日、「アジア・ベトナム投資環境比較セミナー」をハノイ市とホーチミン市で開催した。「2015年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」の結果を基に、ベトナム進出日系企業の経営や活動状況について解説した。調査では回答企業の6割強が事業拡大を予定しており、周辺国より高い割合になっている。2回に分けて報告する。

<過去最多の557社から回答>

 2015年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査において、ベトナム進出日系企業では、過去最多の557社(前年度比99社増、有効回答率54.2%)から回答があった。地域別では北部・中部291社、南部266社だった(表1参照)。業種別では製造業が364社〔うち輸出加工企業(以下、EPE189社、非輸出加工企業(以下、Non EPE156社〕で、非製造業が193社だった。前年度調査については、2015年4月13日記事4月14日記事参照。

 

 なお、この調査は今回で29回目となる。実施時期は20151011月、対象は北東アジア5ヵ国・地域、ASEAN9ヵ国、南西アジア4ヵ国、オセアニア2ヵ国の計20ヵ国・地域に進出する日系企業で、4,635社(有効回答率48.3%)から回答を得た。

 中国とASEAN主要国への進出日系企業のうち、2015年(暦年ベース)の業績(営業利益)が「黒字見込み」と回答した企業の割合は50%台後半から70%台前半だった。ベトナム進出日系企業では、「黒字」58.8%、「均衡」15.0%、「赤字」26.2%となった(図1参照)。非製造業で黒字と回答した割合は60.4%で、EPE55.9%)、Non EPE59.0%)と比べて高かった。経済成長に伴い、内需の影響を受けやすい非製造業の業績が向上したといえる。

 設立年度別の黒字割合を比較すると、営業年数が長いほど、黒字割合が高くなる傾向にある。特に直近5年間の黒字割合は、それ以前と比べるとかなり低い水準となっており、進出企業は、経営が安定するまでに最低でも5年ほど要していることが分かる(図2参照)。製造業、非製造業ともに同じ傾向だ。

<北部より南部で高い事業拡大志向>

 今後の事業展開について、ベトナムでは回答企業の63.9%が事業を拡大する方針としており、周辺国のフィリピン(55.1%)、インドネシア(51.9%)、タイ(49.0%)、マレーシア(44.6%)、中国(38.1%)と比較して高い割合になっている(図3参照)。前年度はベトナムの66.1%の企業が事業拡大方針と回答しており、引き続き他国と比べてベトナムは重要拠点と考えられている。また、北部の59.3%に対して南部は73.2%となり、ベトナムの中でも特に南部の方が拡大を志向している企業の割合が高い。

 事業を拡大する理由としては、「売り上げの増加」が最も多く、製造業(85.5%)と非製造業(82.9%)とで大きな差はみられなかった(表2参照)。他方、「成長性・潜在力の高さ」と回答した企業の割合は、製造業の35.5%に対して非製造業が65.0%と高くなっている。地域別では北部よりも南部の方が7.6ポイント高く、特に南部の市場拡大に対する期待の高さがうかがえる。

(金子信太郎)

(ベトナム)

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