外国人旅行者のホテルなどへの外貨払いが可能に
(ベネズエラ)
カラカス発
2016年04月21日
ベネズエラ国内の観光サービス事業者と免税店が、外国からの旅行者から外貨建てで支払いを受けることができるようにになった。ただし、受け取った外貨の6~9割は現地通貨に両替し、手元に置いた外貨も事業投資に振り向けなければならないほど、さまざまな制約がある。外国からの旅行者には出張者も含まれるとみられる。
<受け取り外貨の6~9割は現地通貨への両替が義務>
ベネズエラでは2003年に外貨管理制度が導入され、現地通貨ボリバルと外貨の換金については為替協定によりルールが定められている。観光サービス事業者による外貨の取り扱いについて新しく定めた為替協定36号が、4月7日付官報40881号に公示された。観光サービス事業者(宿泊、交通、旅行代理店)および免税店はこれまで外国人旅行者から外貨で支払いを受け取ることができなかったが、同協定に基づき可能となった。
ただし、免税店を除く観光サービス事業者による外貨の受け取りは、クレジットカード、デビットカード、電子送金のいずれかの支払い方法によると定められており、現金の受け取りは認めていない。また、支払いを受け取る銀行口座はベネズエラ国内の金融機関に開設された外貨口座でなければならない。受け取った外貨のうち、宿泊、交通サービス事業者、免税店は6割、旅行代理店は9割を現地通貨に両替することが義務付けられている。残りは外貨で残せるが、事業投資に使用することが前提とされている。
なお、全ての観光サービス事業者が外国人旅行者から外貨で支払いを受け取れるわけではない。例えば宿泊施設の場合は4つ星以上のホテル、旅行特別区に立地するホテル、国営観光組織VENETURのホテルでなければならない。これらのホテルは宿泊料だけではなく、付随する各種サービス(朝食など)の支払いも外貨で受け取ることができる。
観光サービス事業者にとって今回の制度変更はメリットがある。これまで外国人旅行者から受け取っていた現地通貨は、高インフレにより価値は目減りしていた。また、現地通貨と外貨を自由に両替できないため輸入決済用外貨の入手が難しかったが、一部ではあるものの外貨を手元に置くことができるようになり、外国から財・サービスを調達できるようになる。
<現地通貨での支払いを断られる可能性も>
為替協定36号は、外国人旅行者を「国際旅行者」と「訪問者」に分類している。国際旅行者は観光目的で6ヵ月までの短期滞在者、訪問者は商業、レジャー、その他の目的で1年以内の期間で滞在し、ベネズエラに所在する組織から報酬を受け取っていない個人と定義している。日本からの出張者は訪問者に当てはまるとみられ、観光客はもちろん出張者も影響を受けそうだ。一方で就労ビザを取得し、ベネズエラに駐在している駐在員は居住者扱いとなるため本協定の対象にはならない。
本協定には「外国人旅行者は現地通貨ボリバルでの支払いができない」とは書かれていないものの、「外貨のみで受け取る」という表現が散見される。ホテルなど観光施設では現地通貨での支払いを断られる可能性もありそうだが、本協定は公布されたばかりであり、しばらくは運用の様子を見る必要があるだろう。
(松浦健太郎)
(ベネズエラ)
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