越境ECによる日本商材の卸売りに期待-寧波保税区に聞く-

(中国)

中国北アジア課、上海発

2016年04月21日

 越境EC(電子商取引)による中国市場での商品販売が日本で注目を集めている。寧波市は、華東地域の代表的貿易港であり、2012年8月に中国初の越境貿易EC試行都市の1つにも認定され、2013年11月に運営を開始している。寧波の越境ECの現状と今後の展望について、寧波保税区市場物流合作局市場物流発展科の馮慧志科長に聞いた(3月10日)。

<寧波は全国3位の越境EC取引>

問:現在の越境ECの規模は。

 

答:越境EC倉庫から消費者への販売金額でいえば、寧波は20131127日から20151131日までの累計で262,000万元(約445億円、1元=約17円)、全国のトップ3に入っている。20151111日(双十一)に、販売金額は28,000万元だった。ちなみに1位は鄭州、2位は杭州だ。一般貿易では取扱高が首位の上海は、越境ECではベストテンにも入っていない。

 

 保税区進出企業(寧波保税区で会社設立の登録手続きを済ませた企業)は400社弱で、税関に登録した越境ECの倉庫運営企業は21あり、越境EC品目は36,000種に及んでいる。201511月末までは385社が輸出入資格や過去に違反の記録などに関する税関の審査を通過し、実際に約100社が越境ECを開始した。

 

 海外からコンテナで商材が運ばれ倉庫に入り、ECモールで販売されると、小包で消費者に送られる。倉庫はEC専用で、他の倉庫から商品を移転することが可能だ。海外から直接ここに輸入することもできる。東区と南区に大きな倉庫があり、延べ床面積は30万平方メートルになる。

 

 企業はまず各種の届け出をし、審査を受ける必要がある。例えばハイリスク営業能力許可証〔取得すれば、化粧品、健康食品、中国国家強制(CCC)認証製品など許認可が必要な商品の越境EC販売が可能になる〕が必要な場合、市の検疫局に申請し取得する必要がある。もう1つは、保税区で(子)会社を設立する必要がある。寧波税関は製品を管理しているのではなく、直接的には企業を管理している。なお、寧波の越境EC倉庫の場合、日本の商材が非常に多い。

 

問:なぜ日本の商材が多いのか。

 

答:ライフスタイルは欧米寄りなのだが、使うものについては日本製品への信頼が高いためだろう。代表例はベビー用品、食品だ。化粧品は日本製と韓国製が多い。

 

<政策の影響は依然大きい>

問:越境EC市場の将来性をどうみるか。

 

答:越境ECは政策の影響を受けやすい業務。ここ数年の成長が速いのは、政策の推進力が大きいため。これからも政策の影響を受け続けるだろう。

 

 48日に税制改正された。あくまで例だが、これまでは100元の紙おむつを輸入した場合、10%の税(行郵税)がかかり税額は10元となるが、税額50元以下は免税なので、結局無税だ。しかし、伝えられるように改正後に増値税がかかるようであれば、価格の安い商品は税制改正後に税が重くなることになる。一方、価格の高い化粧品などは税が安くなる商材だ。そうなると、今後輸入商品の構造に影響が表れるだろう。

 

 今はベビー用品の販売が多いが、これからは例えば健康食品、化粧品、バッグなどが増えることが考えられる。化粧品は一般貿易ルートの場合、いろいろな許可証を取得しなければならないが、保税区方式だと手続きが簡便なので、保税区を通して輸入する企業がこれから増えてくるだろう。

 

問:一般貿易には許認可が必要。他方そうした手続きが簡略化されているのが越境ECのメリットというが、その「手続きの簡略化」に変化が起こるとのうわさもあるが。

 

答:手続きの簡略化は越境EC最大のメリット。ここがなくなれば越境ECの魅力もなくなる。上記のうわさは耳にするが、現実化はしないと思う。

 

 昔は寧波でも、化粧品や粉ミルクなどは一般貿易同様多くの手続きが必要だったが、他の保税区が続々と手続きを簡略化していくのに合わせ、こちらもハイリスク営業能力認定のような制度を打ち出した。

 

<敷居は高いが、後の運営はスムーズな寧波>

問:杭州にも越境EC総合試験区があるが、どんな違いがあるか。

 

答:杭州は(子)会社設立の登録手続きが要らないという点で敷居が低いといえる。税関が直接、倉庫の商材を管理している。抜き取り検査の比率は最初が高く、だんだん下がっていく。一方で寧波は、最初は(子)会社を設立し企業登録をすることが必要で、その点は敷居が高いものの、ハイリスク営業能力認定を取得すれば、その後の運営はスムーズだ。抜き取り検査の比率も低い。

 

 多くのEC業者は両都市に倉庫を持っていると聞く。杭州は空輸が主の倉庫、寧波は船便が主の倉庫という構図だ。規模の大きな寧波をメーン倉庫とし、杭州をサブ倉庫にするといった使い分けをしているとも聞く。

 

 寧波保税区には物流面のメリットがあり、イーベイやアマゾンなど大きなEC業者が倉庫を建設する傾向がある。寧波は港のすぐ隣に倉庫があるので、その間の輸送コストがほとんどかからない。杭州の場合、港から倉庫までトラックで運ぶコストがかかる。

 

問:今後の越境ECの発展の方向性は。

 

答:BtoC業務は成熟しつつあるので、BtoBのプラットホームを構築する予定。卸売り感覚でBtoC業者に卸すプラットホームだ。日本は供給面に強みがあると思うので、日本企業には卸売りを担ってもらえればと思う。その場合、販売ルート開拓の苦労が少なくて済むと思う。

 

 寧波にはOtoO(オンライン・ツー・オフライン)の展示センターがある。展示センターで欲しいと思った商品をネットで注文できる。全国各地にこうした展示センターを設置すれば、多くの商品を消費者に直接注文してもらうことも可能だ。

写真 輸入商品センターの様子
写真 日本の商材では、ベビー用品、オーラルケア用品、調味料、菓子類などが陳列されている

(箱﨑大、林真彦)

(中国)

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