日本企業の技術移転・生産現地化に大きな期待-「日ロ貿易・産業対話」東京で開催(5)-

(ロシア、日本)

欧州ロシアCIS課

2016年04月13日

 全体会合では、今後の日ロ協力や優先分野について議論された。ロシア政府・企業関係者からは、従来の貿易・投資のかたちにとどまらない、ハイテクの共同開発などでの企業連携に期待が示された。日本側からは、インフラやものづくり分野での協力の可能性が伝えられる一方、そのためには、ロシアのビジネス環境のさらなる改善が必要との指摘もあった。

<ハイテクの共同開発で協業の可能性>

 全体会合では、日ロ両国の政府関係者や企業代表が今後の日ロ協力関係などについて意見を述べた。デニス・マントゥロフ工業商務相は、現在の日ロ関係はベストな状態ではないが、対話の継続により強固な基盤を形成し、相互の利益を見据えていくことが重要とし、ロシア政府が進める輸入代替政策にも触れ、技術移転や生産現地化を進める日本企業に対してはあらゆる支援を提供する準備があると述べた。さらにロシアのビジネス環境に関して、行政手続きや法制度が未整備などとする日本企業の指摘を認めつつ、ロシア政府は日本を含むアジア各国からの投資誘致を重要視しており、工業商務省が法整備など側面からビジネス環境改善に取り組むと述べた。

 

 スタニスラフ・ボスクレセンスキー経済発展省次官は、世界銀行の「Doing Business」を引用し、ロシアのビジネス環境がここ4年で大幅に改善したと強調した。また、今後の日ロ協業の可能性として、従来の貿易や投資以外に、共同でハイテクを開発し第三国市場に輸出することを挙げた。アレクセイ・レピク露日ビジネスカウンシル議長兼実業ロシア会長は、日ロ企業間で協力が期待されるのはイノベーション分野で、特に工作機械、医療、IT、農業分野での協力が必要と述べた。同氏によると、ロシア政府は技術面で世界のリーダーとなる新たなタイプの合弁企業の創設を目指しており、その候補には日本企業も入るとした。そのほか、ガス大手ノワテクと産業振興公社ロステフの代表が、自社事業を紹介するとともに日本企業との連携への期待を述べた。

 

<日本側はインフラやものづくり分野での協力に注目>

 日本側からは、経済産業省の上田隆之審議官が林幹雄経済産業相のメッセージを代読し、日ロ経済関係は中長期的にさらなる発展が可能で、そのためには日ロ企業間のパートナーシップ拡大が重要と伝えた。朝田照男・経団連日本ロシア経済委員会委員長兼丸紅会長は、ロシア政府が推進する輸入代替政策が日本企業の参入障壁になるのではないかとの懸念を示しつつ、ロシアのビジネス環境改善が日ロ経済関係緊密化には最も重要だと述べた。また、ロシアへの投資ポテンシャルは依然大きいとの認識を伝えるとともに、日本企業の投資可能な分野として、インフラや再生可能エネルギーを中心とした発電所・送電線整備などを挙げた。

 

 ロシアNIS貿易会の村山滋会長は、広大なロシアではインフラ整備・近代化の需要が大きいと指摘するとともに、投資回収が長期に及ぶインフラ分野では官民一体となった取り組みが重要と語った。また、三井物産の飯島彰己会長は、ロシアの消費財輸入代替のポテンシャルは非常に大きく、同分野では日本企業のものづくりを生かすことができるとした。また、日ロ協業の成果を増やすには、持続可能な協力関係の構築が必要で、その基盤となるのは友好的な2国間関係と述べた。ジェトロの赤星康副理事長は裾野産業の育成と製造分野でのイノベーションにより、産業の高度化と生産性の向上が期待でき、これには日本の産業機械が貢献できるとした。

 

(田端義明)

(ロシア、日本)

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