優先車種や重点部品を生産する企業を優遇-自動車産業の発展支援策を施行-

(ベトナム)

ハノイ発

2016年04月07日

 ベトナム政府は2月4日、「2025年までのベトナム自動車産業発展戦略および2035年までのビジョン(首相決定1168/QD-TTg)」に基づき、「自動車産業発展計画・支援政策に関する首相決定229/QD-TTg」(以下、首相決定229号)を公布、同日から施行した。優先車種や重点部品を生産する企業に対する優遇措置を内容とする。

<低燃費・低価格の小型車などが対象に>

 政府はこれまで、「ベトナム自動車発展マスタープラン(1211QDTTg)」、「裾野産業発展に関する政令(1112015NDCP)」の下で、自動車産業の育成・発展を図ってきた(2014年7月28日記事2015年12月9日記事参照)。首相決定229号は、それらに基づいて国内で優先車種や重点部品を生産する企業に対しての優遇措置などを規定している。

 

 具体的には、年間5万台以上の優先車種の製造能力を持つ企業や、重点部品(エンジン、ギアボックス、トランスミッション)を生産する企業に対し、首相が決定する割合で法人税を優遇する。対象となる優先車種は、1500cc以下で9人乗り以下の低燃費で購入しやすい低価格の小型乗用車、3トン以下の農業用小型多目的トラック、農業用作業車、近・中距離バスなどとなっている。

 

 また、自動車や自動車部品生産分野への投資案件は、裾野産業関連法に基づいて土地に関する優遇を受けられ、特に大規模な案件については土地賃借料が減免される。

 

<大規模投資案件の政府支援や優遇も>

 関税面では、工業団地、経済区、ハイテクパークにおける自動車や自動車部品の生産・組み立てのために輸入される固定資産は輸入関税が優遇され、エンジン部品、トランスミッション、ギアボックス、スペアパーツなどの輸入に際しては最恵国税率が適用される。

 

 これら以外にも、優先車種の生産・組み立てをする大規模な投資案件に対しては、政府が投資関連法令に基づいて支援や優遇を検討・決定する、としている。

 

<優遇受ける手続きや詳細は示されず>

 国内企業による自動車部品の生産や組み立て分野への投資については、ベトナム開発銀行からの融資を受けられる。また、自動車や自動車部品の生産・輸出に関するグローバルサプライチェーンに参加している国内企業は、政府の輸出信用を受けられることになった。

 

 さらに、優先車種の生産に関する技術研究・応用・開発にかかる費用の支援検討や、優先車種生産に関する国内外の技術コンサルタントの雇用および人材育成についての費用が一部補助されるとしている。

 

 一方、首相決定229号には優遇措置のこれ以上の詳細や優遇を受けるための手続きなどについては規定されていない。当地日系自動車メーカーの関係者からは、「ベトナムの自動車産業の現状に鑑み、中長期的な視点に立ってさらに明確な政策を示してほしい」との声が聞かれる。

 

(荒井拓也)

(ベトナム)

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