一般貿易に比べ低い税負担を新税制で是正-中国越境ECの税制改正(1)-

(中国)

上海発

2016年04月19日

 中国政府は4月8日に、越境電子商取引(EC)にかかる新税制を導入した。その理由について財政部は、急速に発展する越境ECに対して、これまでは行郵税(入国する個人の荷物や個人の郵便物に対する輸入関税)のみ適用され、税負担が一般貿易に比べて低く、不公平な競争を招く制度面の不備があった、と説明した。今回の税制改正は、行郵税の適用廃止と新しい税制の適用、許認可が必要な商品の輸入規制、検疫手続きの導入などが含まれており、規範化する動きが徐々に出ている。越境ECの新税制を2回に分けて報告する。

<全国の越境EC試験都市で導入>

 中国越境ECの税制改正については、財政部、海関総署、国家税務総局が324日に共同で3つの通達を公布した後、47日に「越境EC小売輸入商品リスト」も公布し、48日から越境ECの設備が整っている全国の試験都市で導入を開始した。

 

 公布された通達は、「越境EC小売輸入税収政策に関する通知(財関税[201618号)」と「入国物品輸入税調整の関連問題に関する通知(税委会[20162号)」で、今回の税制制度改正の適用対象は、「越境EC小売輸入商品リスト」に掲載する商品のうち、税関システムと連動する越境ECサイト、または税関システムと連動していないが越境EC商品の電子データ(注文、支払い、物流)の提供が可能でかつ法的管理責任を負うべきとされる郵便事業者を経由する全てのBtoC取引(企業と消費者の取引)だ。

 

 財政部は今回の税制改正について、行郵税のみが適用されてきた越境取引は、一般貿易輸入貨物や国産貨物よりも税負担水準が低く、不公平な競争環境が形成されていたことが背景にある、としている。

 

 48日以降の主な変更点は以下のとおり。

 

○越境EC税制制度改正のポイント

1)個人消費者の1回当たりの購入限度額を1,000元(約17,000円、1元=約17円)から2,000元に引き上げ、年間購入額の上限を2万元とする。

21回の取引限度額内は暫定的に関税率ゼロ、増値税(基本は17%)と消費税の70%を課税する。つまり、消費税の課税対象とならない商品の課税率は11.9%(増値税17%×70%)となる。限度額超過分または商品単価が2,000元以上の商品は、一般貿易の税率に基づいて課税する。

3)行郵税が適用されなくなるため、税金50元の免税枠も撤廃する。

4)越境EC小売輸入商品は、通関後30日以内であれば返品可能。返品した場合、納税済みの税の返還と年間取引額の枠組みの調整を申請できる。

5)支払者ではなく、購入者の身分証明が必要。

 

○越境EC小売輸入商品リストの概要

 同リストには1,142個の商品が掲載され、それぞれの商品にHSコード、中国語表記の名称と備考欄に輸入条件の記述がある。商品は食品、化粧品、プラスチック小物、アパレル、文房具、厨房(ちゅうぼう)用小物家電、インテリア用品、デジタルカメラ、寝具類、玩具類、家具類などに分類され、「個人用」の生活類用品に限るが、これまでは越境ECの人気商品だった生鮮品や常温保存可能の無糖牛乳などは対象外となった。また、備考欄には輸入商品の規制条件を記載しており、これにより越境ECで販売できなくなる商品もある。例えば、許認可を取得していない初回輸入または「輸出入野生動植物種商品目録」の中の記載に該当する化粧品、一般食品に分類されないものや、「輸出入野生動植物種商品目録」に記載の健康食品などがある。一方、中国市場の需要が伸びているペットフードやワインなどはリストに記載されており、今後、越境EC経由の輸入が期待できる。

 

 備考欄の説明があいまいなため、判断が難しい商品もある。例えばリストの最後に、「上述の商品は税関に許認可書の提出を免除する。検験検疫監督管理は国家の関連法律法規に従って実行する。直輸商品は通関書類の検査を免除する。ネット通販保税商品は『一線』への搬入は通関書類の検査が必要で、『二線』への搬出は通関書類の検査を免除する」という記述について、一線への搬入とは保税倉庫搬入のこと、二線への搬出とは保税倉庫から通関させることを指していると考えられるが、「検験検疫監督管理は国家の法律に従って実行する」「通関書類」の記述について、一般貿易との違いを正しく判断するためには、検験検疫監督部門の細則発表を待つ必要がある。

 

<個人用入国荷物の行郵税も調整に>

 なお、個人用入国荷物に適用される行郵税に関して財政部は、48日以降、下記のとおり調整すると告知した。適用対象は、「非貿易性の個人用入国荷物、郵便物など」だ。なお、個人用入国荷物の限度額について、中国人は8,000元(注)まで、外国人は2,000元まで、郵便物は一律1,000元までは免税となり、さらにそれを超えた分に関して、税額50元以下の場合は免税とする規定は従来どおり。

 

○今後の行郵税の変更ポイント

1)行郵税の税率は、従来の10%、20%、30%、50%の4段階から、15%、30%、60%の3段階に調整する(表参照)。

2)このうち、15%は最恵国待遇のゼロ関税商品、60%はハイエンド商品で消費税の課税対象、30%はその他の商品と一般貿易輸入品に適用される。

表 行郵税の変更

 併せて中国税関は47日、旧2012年第15号の「中国輸入物品分類表」を更新した。

 

(注)入国旅客持物品免税額5,000に、入国免税店購入免税額3,000を加えた額

 

(王淅)

(中国)

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