ASEAN域内の調達先を目指す在ベトナム企業-ジェトロの「日越・ASEAN裾野産業ビジネスマッチング」報告-

(ベトナム)

ホーチミン発

2016年04月15日

 ジェトロは3月17日、ホーチミン市で市政府機関と部品調達商談会「日越・ASEAN裾野産業ビジネスマッチング」を開催した。ベトナム、タイ、シンガポール、マレーシアなどに進出している日系セットメーカー25社が参加し、日系・地場サプライヤー約200社と商談を行った。ベトナムで在ASEAN日系企業との商談を主目的として開催したのはジェトロ初の試み。裾野産業関連の部品調達商談会としては過去最多の商談件数となった。

<部品調達商談の件数は過去最多>

 ジェトロ・ホーチミン事務所は317日、ホーチミン市工業団地管理委員会(HEPZA)、ホーチミン市商工局(DOIT)傘下の裾野産業開発センターと部品調達商談会「日越・ASEAN裾野産業ビジネスマッチング」をホーチミン市内で開催した。ベトナム、タイ、シンガポール、マレーシアなどに進出している日系セットメーカー25社が、主に電気・電子部品、金型、金属加工製品などの部品調達を目的として参加した。また、在ベトナムの日系・地場の部品サプライヤー約200社が参加し、500人を超える盛況ぶりだった。ジェトロ・ホーチミン事務所が主催した裾野産業関連の部品調達商談会としては、商談の総件数、1社当たりの商談件数ともに過去最多となった(表1参照)。

盛況となった商談会場(ジェトロ撮影)
表1 近年のジェトロ・ホーチミン事務所主催商談会の実績

<裾野産業の成長示す現地調達率の向上>

 ジェトロは在ベトナム日系メーカーの現地調達率向上を目的として、ベトナム国内のセットメーカーとサプライヤーのビジネスマッチングに取り組んできたが、在ASEANの日系セットメーカーへの部品供給を主目的とした商談会は、ベトナムでは初めての試み。ジェトロの「2015年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によると、在ベトナム日系メーカーの原材料・部品の現地調達率は、2010年の22.4%から2015年の32.1%と10ポイント近く伸びている(表2参照)。製造業の集積がある中国、タイには及ばないものの、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどと比べ、ベトナムにおける現地調達率は大きく向上している。裏を返せば、ベトナムの裾野産業が育ってきているともいえる。

表2 日系メーカーにおける原材料・部品の現地調達率比較

<在越日系・地場と在ASEAN日系の三方良しに>

 今回の商談会は、在ベトナム日系企業、ベトナム地場企業、在ASEAN日系企業の次のような現状を踏まえたことに特徴がある。(1)数多くベトナムに進出してきている日系中小部品メーカーのうち、操業して数年経ち生産体制が十分に整ってきた企業は、ベトナム国内や日本といった既存の供給先だけではなく、ASEAN域内にも輸出するポテンシャルを有している。(2)地場企業は在ベトナム日系企業との取引を通じて、技術力の向上、納期の順守などの面でも大幅な改善がみられるようになり、海外に輸出するだけの体制が整いつつある。(3)在ASEAN域内の一部日系大手セットメーカーは、物流インフラの改善によるリードタイムの短縮を背景に、コスト削減の徹底を目的としてASEANワイドの域内調達を方針として掲げている。

 

 商談会に参加した調達側の電気・電子部品メーカーからは、以下のコメントが寄せられている(一部抜粋)。

 

○期待を持てる板金メーカー、ヒーターメーカー、スプリングメーカー、銅線メーカーと面談できた。

○当社が求めていた電気・電子部品は残念ながら商談できなかったが、(1台の成形機で2種類の樹脂を熱融着する)2色成形において1社のポテンシャルを感じることができた。

○すぐに採用できるメーカーとは出会えなかったが、今後の動向を定期的にチェックしたい。今後取引先になりそうなメーカーは数社見つけることができた。

○未知だったベトナム南部サプライヤーとの商談ができた。過去の逆見本市(部品ブース設営)より手間がかからず、効率的だった。

 

 ベトナムでは金型、金属加工、射出成型などの分野で競争力のある日系・地場企業は存在するが、タイ、マレーシア、シンガポールの日系企業からのニーズが高い電気・電子部品は未成熟だ。出展者からは「ベトナムはASEAN域内の調達先における最有力候補」との声も聞かれ、周辺国の日系企業からの期待も出ているが、この潮流を大きなものにするには、電気・電子をはじめとした部品メーカーの集積がカギとなるだろう。

 

(大久保文博)

(ベトナム)

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