空港閉鎖に伴い、航空貨物は周辺国から迂回輸送-ブリュッセルのテロ事件のビジネスへの影響-

(ベルギー、EU)

ブリュッセル発

2016年03月24日

 ブリュッセルで3月22日朝に発生したテロ事件で、多くの在ベルギー日系企業に衝撃が走った。ブリュッセルとその近郊に集中する販売拠点では、自宅待機(在宅勤務)などに切り替えた企業が目立った。また、日系の金融機関や物流事業者は在ベルギー日系企業の事業を支えるため、臨機応変に対応している。他方、ブリュッセルから離れた立地の製造業などでは、通常操業を続けている企業が多い。なお、ベルギーへの出張・渡航については自粛・禁止などの対応が多い。

<日系金融機関などに大きな混乱なし>

 在ブリュッセルの日系金融機関によると、これまでのところ、今回のテロ事件の金融実務への大きな影響は出ていない。テロ事件が発生した322日付で、ベルギーへの出張・渡航自粛指示が本社(日本)から出ているため、社内の打ち合わせなどは電話会議などで対応している。また、金融機関の場合、顧客とのコミュニケーションが重要なため、送金確定(意思確認)の最終確認作業を電話で行っているが、テロ事件発生直後には、電話の通信事情が悪化したことに加えて、顧客の自宅待機などが続き、送金確定に手間取るという影響もあった。それでも、翌23日からは業務への影響はほとんどなく、通常どおりの営業態勢に戻しているという。

 

 なお、323日にブリュッセルで「経済セミナー」開催を予定していた日系金融機関もあったが、テロ事件に伴う治安状況を踏まえて開催が中止になった。

 

<オランダやフランスに航空貨物を転送>

 当地で航空貨物の取り扱いを行う日系ロジスティクス企業によると、テロ事件の発生直後、ブリュッセル(ザベンテム)空港が閉鎖されたため、航空貨物の取り扱いは停止状態に陥ったという。しかし、EU域内の航空貨物輸送は比較的柔軟性があり、22日午後4時過ぎ以降、輸出貨物については、アムステルダム・スキポール空港(オランダ)やパリ・シャルルドゴール空港(フランス)などの周辺空港に貨物を転送(代替輸送)するかたちで、滞留が起こらない対応が取られるようになった。このため、同社でも社員を通常勤務に戻し、欧州ネットワークを活用した貨物転送を当面続けることで、顧客の物流に支障を来さない対応に努めているという。ベルギーへの輸入貨物についても、同社では、周辺空港経由で搬送することで対応する。ただし、(1)転送に伴う輸送の長距離化、(2)テロ事件の余波による周辺空港でのセキュリティー措置の厳格化、が想定されることから、顧客に対して、「従来は12日と案内できたリードタイムを(テロ事件以降は)45日とせざるを得ない状況」「通常よりも余裕を持った輸送日程で、航空貨物管理をお願いするほかない」と説明している。

 

<企業によっては323日から通常業務に戻る>

 ベルギーに立地する日系製造業の生産拠点については、その多くがブリュッセル郊外または市外の地方部に立地していることから、通常どおりの出勤・操業を続けているところが多い。

 

 他方、販売法人や駐在員事務所はブリュッセルとその近郊に集中しているため、テロ事件が発生した322日は社員とその家族の安全を最優先して、自宅待機(在宅勤務)としたところが目立つ。翌23日から通常業務に戻した企業もあるが、一部企業では24日からイースター休暇(328日まで)に入るため、23日も事務所を閉鎖し、幹部社員以外は出勤しなかったようだ。このほか、テロ事件発生に伴って日系各社が行った具体的な対応としては、以下が挙げられる。

 

○後続テロ発生の可能性への警戒・情報収集

○公共交通機関(地下鉄など)・空港の利用制限もしくは禁止

○新たな出張の制限もしくは禁止

○社屋・関連施設のセキュリティー強化

○電話通信事情の悪化(特に携帯電話)に伴う、駐在員自宅での社用メール接続の確保

 

(前田篤穂)

(ベルギー、EU)

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