外国人就労者の諸手続きを簡素化-中南米における制度改定の動向-

(ペルー)

リマ発

2016年03月11日

 2015年10月16日付内務省政令0633号により、国家移民監督庁が定める行政手続き要綱(TUPA)が改正され、2016年1月以降、外国人居住者に関する約130の手続きが簡素化、一部が撤廃された。同改正により、ペルーに居住する約8万5,000人の外国人の就労ビザや滞在許可延長などの諸手続きが簡略化される。

<外国人税の納付手続きをオンライン化>

 国家移民監督庁(旧DIGEMIN:内務省入国管理・帰化局)によると、2014年までの10年間で、労働ビザ(居住・短期を含む)の年間発給件数が1,463件から13,065件へと約9倍に急増した。こうした現状を受け、手続きの迅速化が求められたことから、外国人就労者の諸手続きが簡素化された。

 

 ペルーに居住する外国人は、毎年20ドルの外国人税(TAE)を納付する必要がある。従来は、国立銀行のラ・ナシオン銀行で納付した後、発行されるレシート番号を国家移民監督庁の窓口に提示することでTAE納付証明書が発行されていたが、国家移民監督庁での手続きに相当の時間を要していた。しかし、20161月以降、同庁のオンラインサービスシステムにユーザー登録を行うことで、オンラインで手続きを行うことが可能になった。なお、TAEはペルー人を配偶者に持つ外国人と宗教家、難民は免税申請することができるが、これについてもオンラインでの手続きが可能となった。

 

 具体的な手順としては、まずラ・ナシオン銀行で外国人税の納付を行い、その後、同銀行発行の納付確認番号をオンラインサービスシステムに入力することでTAE納付証明書が発行され、国家移民監督庁の窓口に出向く必要がなくなった。同証明書の発行手続きの期限は1月~3月末で、期限を超えると3ヵ月ごとに100%ずつの超過金が上乗せされ、40ドルから最高100ドルまで引き上げられる。同証明書の発行手続きは首都リマの国家移民監督庁の窓口でしか行えず、地方州在住の外国人就労者はリマへの往復費用の負担を強いられてきたが、オンライン処理によりリマまで手続きに出掛ける必要がなくなり、証明書発行手続きの遅延回避の効果も期待される。

 

 加えて、外国人税が納付済みであることを証明するためのホログラムシールが廃止された。従来は、居住外国人に対し発行される外国人登録証(居住外国人の身分証明書)の裏面にホログラムシールを貼ることが義務付けられていたが、これが不要となった。また、毎年行われる滞在資格延長手続きを完了していることを証明するホログラムシールについても、20161月に廃止された。ペルーの公的機関や企業が、TAE納付状況や滞在資格の有無を確認する場合には、国家移民監督庁のウェブサイトで確認できるようになった。

 

<労働ビザなどの手続きも簡素化>

 外国人就労者が労働ビザの滞在資格の種別(短期から在住など)を変更する際には、経済的身分保証書の提出が必要だったが、これが廃止され、提出が不要となった。同保証書は配偶者のビザ申請時にも必要だったが、同様に廃止された。また、外国人が労働ビザを申請する際、ペルーの労働雇用促進省の承認を経た労働契約書の提出が必要だが、有効期限に係る取り扱いが緩和された。従来、同省の承認後15営業日以内にビザ申請を行うことが定められていたが、手続き中に期限切れとなることを回避する目的で、30営業日以内へと延長された。また、労働ビザを延長する場合は、これまで直近3ヵ月分の給与明細書の提出が必要とされていたが、2ヵ月分へと簡素化された。

 

 毎年、申請が必要な家族のビザ延長手続きには、結婚証明書、出生証明書の提出が求められていたが、これらの書類も不要となった。これまで日本人駐在員の配偶者や子供の延長手続き時に、結婚や出生を証明するためにその都度、日本の戸籍謄本の入手が必要で、事務負担は大きかった。

 

 今回簡素化されたものについては、日本とペルーの経済連携協定(EPA)で規定され、両国政府間に発足するビジネス環境整備小委員会において、日本側から改善の必要性が指摘されてきた労働ビザや外国人登録証の申請などの手続きが含まれており(2014年10月3日記事参照)、日系進出企業も評価している。今回の改正により、外国人就労者の諸手続きの簡素化が図られ、外国企業の活動のさらなる活発化が期待されている。

 

(藤本雅之)

(ペルー)

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