手形支払場所指定の事前電子申請制度を導入-金融機関の対応間に合わず、貿易取引に混乱も-

(アルジェリア)

パリ発

2016年03月30日

 アルジェリア中央銀行の指令により、3月15日に手形支払場所指定の事前電子申請制度が導入された。アルジェリアでは1月に、自動車をはじめ複数の品目に対して輸入ライセンス制度が導入されたが、いまだに申請後の輸入割当結果が公表されていない。相次ぐ輸入制限措置により、アルジェリアへの製品輸出にさらなる混乱が懸念される。

<指定取引銀行15行のウェブサイトで手続き>

 アルジェリアでは2009年以降、全ての輸出入取引に際して、公認銀行での手形支払場所指定(Domiciliation)が義務付けられている。手形支払場所指定手続きは、必ず決済と通関の前に行わなければならない。

 

 アルジェリア中銀は国内の金融機関に対して、2016313日付第172016DGC号指令により、315日以降、信用状(LC)開設のために必要な手形支払場所指定手続きを開始する前に、事前電子申請を義務付けた。この事前申請は指定取引銀行15行のウェブサイトから行わなければならない。会社名、税登録番号および商業登記番号を入力すると、事前電子申請用IDとパスワードが送られる。これらを入力して事前電子申請を行い、申請番号を受理した段階で、初めて手形支払場所指定申請書を金融機関に渡すことができる。

 

 なお、製品輸入取引に関する手形支払場所指定手続きの際、取引額の0.3%相当〔最低2万ディナール(約2万円、1ディナール=約1.0円)〕の税金が、サービス輸入の場合は取引額の3%相当の税金が課される。なお、民間企業は10万ディナール以上の全ての輸入取引に関してはLCでの支払いが義務付けられていたが、2014年予算法で手形支払書類渡し(DP)も利用可能となっている。

 

<国外への違法送金の取り締まりが目的>

 中銀は、事前電子申請の導入に伴い、税関と金融機関の一層の情報共有が進み、税関への輸入申告額と金融機関へのLC開設申請額に相違がないかが確認できるため、国外への違法な送金を食い止めることができる、と説明している。しかし、新たな手続きの追加で輸入手続きがさらに煩雑となり、非関税障壁が拡大した、との見方もある。

 

 314日に本措置導入の通知を受けた金融機関は、翌15日からの運用開始が間に合わなかったため、事前電子申請用IDとパスワードが申請者に送られていない状況が続いている。本措置の導入以前でも、LC開設には数週間から数ヵ月を要しており、今後、さらなる決済遅延が発生することも懸念される。

 

<輸入ライセンス申請の結果発表は大幅遅延>

 貿易赤字対策の1つとして、アルジェリア政府は自動車などの主要輸入品目の規制強化を実施している。政府は2015126日付政令により、輸入ライセンス制度の導入を公式に発表し、20161月から輸入ライセンスの申請受付を開始した(2016年1月21日記事参照)EUからの農産品と加工食品を対象とした割当申請の受付は126日に終了したが、結果はまだ公表されていない。同様に、自動車、セメント、鉄鋼を対象とした輸入ライセンスの申請受付も23日に終了したが、審議に時間がかかることからライセンスの発行が遅れている。その結果、自動車ディーラーの中には在庫が底をつき始めているところもあり、31726日に開催されたアルジェ国際モーターショーに出展できなくなった主要ディーラーもあった。現地主要紙「エル・ワタン」は、ライセンス申請の結果発表は少なくとも6月まで延期される、と報じている。

 

(ピエリック・グルニエ)

(アルジェリア)

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