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日本の技術指導を受けた地場メーカーが成長-アジアの原材料・部品の現地調達の課題と展望(2)-

(パキスタン)

カラチ発

2016年03月02日

 進出日系自動車メーカーは、パキスタン政府の政策に従い、自動車の国産化と原料・部品の現地調達化を進めている。しかし、自動車の販売台数は年20万台にとどまっており、日系部品サプライヤーにとって製造拠点を設立するのは採算が合わない。今後5年で市場が30万台に拡大することが期待される中、資金力のある地場財閥系の部品サプライヤーが日本企業との技術指導契約を活用し、ビジネスを拡大することが想定される。

<製造原価に占める材料費は8割超>

 パキスタンに進出している日系メーカーの業種は、主に自動車、自動二輪、化学、鉄鋼などだが、こうしたメーカーに原材料・部品を納める日系サプライヤーは数社しか進出していない。一方、政府は完成品や組み立て部品に対して高関税を課し、国内生産や現地調達を促す政策を取っている。日系企業は、裾野産業が脆弱(ぜいじゃく)なパキスタンで原材料・部品の現地調達や完成品の製造に取り組んでいる。

 

 ジェトロが行った「2015年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」(以下、ジェトロ調査)によると、パキスタン進出日系製造業の製造原価に占める材料費の割合は平均で83.4%と、調査対象の18ヵ国・地域の中で最も高い。途上国にもかかわらず、労働集約的な産業の進出が少ないからだ。高関税が課された輸入材や技術指導契約に基づいた高コストの現地生産材を使用するため、材料費の割合が高くなる傾向にある。

 

 日系製造業の現地調達率(金額ベース)の平均は37.4%だが、国外の調達先をみると日本やASEANからが1617%程度と低い。隣国インドからも輸入規制の部品調達は困難で、中東や欧州からの調達が比較的多い。

 

<自動車部品の国産化は市場次第>

 日系製造業の現地調達先は地場企業が74.1%を占める。日系がほぼ100%のシェアを占める自動車産業では、自動車メーカーは40110社ある部品サプライヤーから調達しているが、日系の部品サプライヤーが少ないため、日本の部品製造企業と技術指導契約を結んだ地場企業からの調達が多い。

 

 地場部品メーカー最大手アグリオート・インダストリーズの取締役会長で、パキスタン駐在が通算20年間に及ぶ荒栄豊氏は「5年後にパキスタンの自動車市場は30万台に拡大することが予想される。裾野産業が未熟だからこそ、サプライヤーにとってのチャンスは大きい」と語る。同社はハビブ財閥傘下で、1981年の設立。日本企業6社と技術指導契約を締結しており、主に、ショックアブソーバー、ウインドーレギュレーター、フロントフォークなどを製造する。パキスタンでショックアブソーバーを生産している会社はほかにないという。

 

 パキスタン工業開発庁(EDB)は、部品ごとに付加価値の指標であるインプット・アウトプット比率(IOR)を計算し、国産化されているかどうかを判定する。それに基づいて関税率が決定される。自動車部品会社の場合、法令SRO6552006年)に基づき輸入関税率は原材料が0%、サブコンポーネントが5%、構成部品が10%、部分組み立て品が20%と定められている。

 

 「自動車の販売台数が増えなければ、国産化や現地調達は進まないだろう」と荒栄会長は指摘する。国産化には金型への設備投資が伴うが、少量生産では採算が合わない。現状では市場規模が小さいため、自動車メーカーではモデルを絞って長期間生産するなどの対応が必要になる。しかし、近年は全世界での一斉モデルチェンジなどがあり、モデルを長期間切り替えないことは難しいという。

 

<技術指導契約は日本側にもメリット>

 同社は2012年、プレス部品を製造するアグリオート・スタンピングを新たに設立した。従来は納入されたプレス部品の寸法が合わないなど低品質のものがあり、現場で検査し手直しが必要だった。同社は検査不要のプレス部品をジャスト・イン・タイム方式で120回納入する体制を整え、自動車メーカーの生産がスムーズになった。

 

 「品質に問題があるため、当社ではオイルなどを除きパキスタンの部材は使用していない」と荒栄会長は話す。使用する鋼材の約6割は高張力鋼板(ハイテン材)で日本製、残りは韓国製だ。車両の安全性向上や軽量化を目指し、近年では高硬度のハイテン材を使用することが多くなっており、在タイ日系企業からタイ人の技術者2人を派遣してもらい、技術指導を受けている。

 

 技術指導契約には、指導を受けるパキスタン側企業に一定の資金が必要となる。体力に劣る小規模な部品サプライヤーは、コピー品や低品質のものしか製造できない。こうした企業は淘汰(とうた)されるか、23次下請けになっていく傾向にある。

 

 「技術指導契約は日本企業にもメリットがある。リスクが低いにもかかわらず、一定の収益を得ることができる」と荒栄会長。今後も技術指導ベースで部品生産が拡大していくことが予想される。

 

北見創

(パキスタン)

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