中東にも知的財産研究会、模倣品対策を強化

(アラブ首長国連邦)

ドバイ発

2016年03月17日

 模倣品の中継地や消費地とされる中東地域では、知的財産保護意識を高めることがますます重要となっている。こうした中、各国政府機関などと連携を強化し、日系企業同士が情報共有を図ることを目的に、模倣品対策に取り組む中東知的財産研究会(中東IPG)が2月24日に発足した。

<ドバイの日系企業19社がメンバーに>

 世界税関機構(WCO)によると、模倣品の45%が中国、30%が香港から出荷されており、アラブ首長国連邦(UAE)も中継地となっている(図1参照)。仕向け地としては米国に次いでサウジアラビアが2位で、模倣品が大量に消費されている(図2参照)。

 このように当地における知的財産保護の重要性が増す中、ジェトロは中東地域における日系企業支援と模倣品対策を強化するため、224日、ドバイにおいて中東IPGを発足させ、設立式典を開催した。IPGは当地進出日系企業などをメンバーに、これまでは中国、韓国、ASEAN、インド、欧州、米国でも設立している。今般、発足した中東IPGには、知的財産保護に取り組む在ドバイ日系企業19社がメンバーとして参加、ジェトロが事務局を務める。設立式典には、メンバー企業、ドバイの政府機関(警察、税関、経済開発局)および知財保護に関わる団体などから、59人が参加した。

 

<設立式典では多数のキーパーソンが登壇>

 設立式典で開会のあいさつに立ったジェトロ知的財産・イノベーション部の三橋敏宏部長は、模倣品対策をはじめとする知的財産保護に関し、中東各国の政府機関などとの連携を強化するとともに、日系企業同士の情報共有を図るという中東IPG設立の趣旨について説明。中東IPGの設立により模倣品問題をはじめとする知的財産に関する諸問題の改善・解決に向けた動きを加速し、中東における日系企業のビジネス環境の改善を図りたいと述べた。

 

 来賓あいさつで道上尚史・在ドバイ日本総領事は、UAEの知財関係者による知財保護のための活動に謝意を示した上で、中東経済のハブであるドバイが知的財産保護について、さらなるイニシアチブを取ってこの地域をリードすることに期待するとともに、日系企業が円滑にビジネスを展開し、地域の一層の発展に貢献できるよう、今後も知的財産保護に関するサポートを賜りたいと述べた。

 

 また、ドバイ警察のオサイバ経済犯罪対策部長、ドバイ税関のイッサ法務部長、ドバイ経済開発局のベザド知的財産権保護部長は、中東IPG設立への祝辞を述べるとともに、各機関における知的財産保護の取り組みと活動について紹介した。その上で、知的財産保護に関して、引き続き日本との連携・協力関係の強化を求めた。

 

 UAE知的財産協会のアルムエイニ事務総長は、「中東における知的財産犯罪撲滅のための新たなイニシアチブ」と題した基調講演において、知識経済への転換はUAEの優先度の高い政策で、実現のために知的財産保護は欠かせないものであることから、今後も日本と連携・協力して知的財産保護の強化を図りたいとした。

 

 在ドバイ米国総領事館のジョゼフ・ギブリン副領事は、創造性のあるイノベーション社会における知的財産保護の必要性を強調し、模倣品による知的財産権侵害は犯罪であり、その収益は犯罪集団やテロリストの資金源になることを全ての人々が認識すべきと述べた。また、在ドバイの知的財産保護団体ブランド所有者保護グループ(BPGBrand Owners’Protection Group)のマレック・ハヌーフ副会長およびアラブ反著作権侵害同盟(AAAArabian Antipiracy Alliance)のオラ・クデイル副会長は、知的財産保護の重要性をあらためて訴えるとともに、中東IPGとの連携・協力に期待しているとした。サバ知的財産法律事務所パートナー弁護士のハディ・カワンド氏は、湾岸協力機構(GCC)内の商標制度を統一するためのGCC統一商標法などについて説明した。

 

 ネットワーキングイベントでは、参加者の間で知的財産保護に関する活発な議論が行われた。

 

(後藤昌夫)

(アラブ首長国連邦)

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