2015年の対内直接投資は件数・金額とも大幅増-TPP見据え繊維・縫製業への投資目立つ-

(ベトナム)

ハノイ発

2016年02月05日

 外国投資庁(FIA)によると、2015年の対内直接投資(認可ベース、12月20日現在)は、新規・拡張合わせて2,827件(前年比29.6%増)、227億5,700万ドル(12.5%増)となった。国・地域別では件数・金額ともに韓国が約3割を占め、金額上位の案件は、外国人による所有規制が緩和された不動産業や、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定締結を見据えた繊維・縫製業への投資が目立った。

<韓国が新規・拡張ともに1位>

 2015年の対内直接投資のうち、新規案件は2,013件(前年比26.8%増)、1557,800万ドル(0.4%減)、拡張案件は814件(37.0%増)、718,000万ドル(56.5%増)となり、件数はいずれも増加した一方、金額は拡張案件が大きく伸びた。

 

 国・地域別では、韓国が計962件、672,700万ドルで、新規・拡張ともに件数、金額ともに1位となった(表1参照)。新規と拡張を合わせた投資額では、韓国に次いでマレーシアが247,800万ドル、3位の日本が184,200万ドル、4位の台湾が139,800万ドル、5位サモアが139,500万ドルとなった。なお、韓国の暁星はトルコの案件となっており、これを含めると韓国からの投資は全体の約3割を占め、2014年に続き存在感を示した。

 業種別では、「製造・加工」が1523,300万ドルと全体の約7割を占めた(表2参照)。次いで、「ライフライン」(電気・ガス供給など)28900万ドル、「不動産」239,400万ドルと続いた。特に不動産への投資額が2014年の5倍超となっているのは、不動産市況の回復や20157月に外国人による所有規制が緩和された影響によるものと思われる。

 省・市別にみると、1位が北部バクニン省で365,000万ドル、次いでホーチミン市で332,400万ドル、3位が南部のビンズオン省で295,300万ドルとなった(表3参照)。上位5省・市のうちバクニン省以外は全て南部だった。北部は韓国サムスングループの投資案件、南部はインフラや不動産投資などの大型案件が寄与した。

<インフラや不動産への投資が上位>

 国・地域別では、新規・拡張案件ともに韓国および台湾系企業(他国・地域からの迂回投資を含む)による投資が目立った。

 

 2015年最大の新規投資案件は、マレーシアのテクニク・ジャナクアサ(Teknik Janakuasa)によるチャビン省での火力発電所建設案件(24700万ドル)だった(表4参照)。次いで、英国のデンバー・パワー(Denver Power)によるホーチミン市の不動産案件(12億ドル)、台湾系正隆(Cheng Loong)グループによるビンズオン省での製紙工場建設案件(サモア経由、10億ドル)が続いた。

 

 拡張投資に関しては、1位のサムスンディスプレーによる北部バクニン省への投資案件(30億ドル)を除いて軒並み1億ドル台の小規模投資となり、地域別では、新規・拡張ともに南部が多くを占めた。

 

 新規・拡張案件とも、韓国暁星(Hyosung)グループによる南部ドンナイ省への新規案件(トルコ法人経由、66,000万ドル)や、香港華孚(Huafu)グループなどの繊維関連案件、台湾企業の製紙や家具製造工場案件など、TPP協定締結後を見据えた投資拡大が目立った。

<日本からの投資は中小案件が目立つ>

 日本からの新規・拡張を含めた投資件数は456件で前年比4.6%増、金額は184,200万ドルで10.1%減となった。最大の投資案件は、北部クアンニン省におけるバクダン橋のBOT(建設・運営・譲渡)事業(34,400万ドル)だったが、規模別では500万ドル未満の投資が全体の87%を占め、引き続き中小規模の案件が目立った。

 

 このうち新規案件(299件)をみると、業種別では「製造・加工」が102件でトップ、次いで「コンサルティング・技術」(54件)、「小売り・流通」(52件)の順となった。製造業の認可件数が前年比で16.4%減少した一方、ホテル・飲食業は、前年の6件から11件へ増加した。20151月の飲食業の外資規制緩和の影響も要因として考えられる。

 

 地域別では、北部が114件、中部が30件、南部が155件となり、北部、南部で減少、中部は増加した。

 

 なお、今回発表されたのは速報値で、後日確定値が発表される。

 

荒井拓也

(ベトナム)

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