イラン経済財務相ら、日本企業に投資を呼び掛け-ジェトロが東京で「投資セミナー」開催-

(イラン)

中東アフリカ課、テヘラン発

2016年02月19日

 ジェトロは2月5日、日・イラン投資協定締結のためにイランのアリー・タイエブニア経済財務相が来日した機会を捉え、都内で「イラン投資セミナー」を開催した。セミナーでは同相をはじめ、モハンマド・ハザイー経済財務次官兼投資・経済・技術援助機構(OIETAI)長官やイラン民営化機構総裁、企業の代表らも登壇し、イランの投資環境や自社ビジネスを紹介するとともに、日本企業の積極的な対イラン投資を訴えた。日本企業や関係機関から311人が参加した。

<イラン市場のポテンシャルをアピール>

 今回のセミナーは、タイエブニア経済財務相来日の機会を受け、イランの投資環境の紹介と日本企業のイランへの投資誘致を目的として、ジェトロが都内(泉ガーデンギャラリー)で開催した。

 

 セミナー冒頭では、ジェトロの石毛博行理事長による主催者あいさつに続き、外務省の上村司中東アフリカ局長が岸田文雄外相のメッセージを代読、レザ・ナザルアハリ駐日イラン大使による開会あいさつが行われた。

 続いてタイエブニア経済財務相が登壇し、「イランの経済」と題して予定時間をオーバーする約40分を使い、イラン市場のポテンシャルを熱心に説明した。

 同相はイランの魅力として、(1)約8,000万人の人口(市場規模)、(2)教育水準が高い労働力(多数の若年層)、(3)豊富な天然資源(石油・ガス)、(4)地理的条件(約3億人規模となるカスピ海沿岸諸国市場に隣接)、(5)比較的良好なインフラ・物流網、(6)製造業と国際的な生産ネットワークの発展、(7)外国企業の投資活用と広範な貿易ネットワークによる経済発展、などを挙げた。

 

 また、今後の成長が見込める分野として以下を挙げ、日本企業が勤勉さと製品・サービスの質の高さでイラン国民の信頼を得ていることから、大きな投資チャンスがあると訴えた。

 

○インフラ:幹線道路の拡大、鉄道ターミナルの建設、空港の建設、港湾の整備。

○環境・エネルギー(電力・水):低燃費の自動車の生産、再生可能エネルギーの開発、農業開発(特にビニールハウス栽培)、農作物の生産と包装、新たな発電所の開発と建設、水源の確保と水質汚濁の防止。

○知識集約型産業:リサーチパークの建設、起業のスタートアップ支援、知識ベース企業の創出。

○金融業:銀行の設立や保険業など。企業の長期的資金調達のための株式市場の強化。

○観光・サービス業:交通網・運輸網の整備による観光客の増加、ホテルやサービスエリアの建設・開発・経営。

○石油化学産業:上流・中流・下流まで広範に存在。石油製品の付加価値向上による輸出増。

○原子力:核エネルギーの平和利用(医療、農業、発電)に関する技術の向上。

 

<外国投資は規制より優遇策に重点>

 続いてハザイーOIETAI長官が登壇し、「イランにおける外国投資:規則とインセンティブ」と題し、イランの投資環境について説明した。具体的には、規制よりも優遇策に重点を置き、「日本企業にもイランの投資機会をぜひ活用してほしい」と強く呼び掛けた。

 イランは外国投資奨励保護法(FIPPA)により、外国投資の保護と内国民待遇を保証しており、60以上の国と投資協定を締結済みであること、OIETAIが専門機関として外国投資をサポートすることなどを紹介し、日本企業と協力したい優先分野として、自動車・自動車部品(特に環境に優しい製品)、交通インフラ(港湾、道路、鉄道、駅)、環境(グリーン技術、グリーンハウスなど)、水処理、核の平和的利用、金融(銀行、保険)などを挙げた。

 

 そのほかイラン側からは、アリーアシュラフ・プールホセイニ経済財務次官兼イラン民営化機構総裁が、同機構の役割(国営企業の株や資産を民間企業に売買・譲渡)を紹介するとともに、民間企業3社(ホテル・観光業大手フェレシュテ・パサルガド・ホテル、医薬品やエネルギーなどを手掛けるコングロマリットのタドビル・エコノミック・デベロップメント、農業・畜産大手イラニアン・モダン・ファームズ・ホールディング)が、日本企業に向けてそれぞれのプロジェクトを紹介した。

 

 ジェトロからは、テヘラン事務所の中村志信所長がイランの政治・経済動向や市場の魅力と課題、ジェトロの支援策について紹介した。最後の質疑応答では、再びハザイーOIETAI長官が、「投資を検討している日本企業は、この機会に遅れることなくすぐにでもイランを訪問し、自身の目でその市場の可能性を確かめてほしい」と力強く訴えた。

 

(米倉大輔、中村志信)

(イラン)

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