環境圧力受け強まる排ガス・燃費規制

(中国)

北京発

2016年02月09日

 政府が環境に優しいグリーン発展を理念に掲げている中国では、深刻な大気汚染の改善を目指して、自動車の排ガス規制や燃費規制が強化されている。4月からは、一層厳しい排出規制が東部11省・市で始まり、適用範囲が段階的に拡大されることになっている。中国自動車市場の動向にも影響を与えかねない規制の動きを報告する。

<ユーロ5レベルの新規制を11省・市で先行実施へ>

 北京などで微小粒子状物質(PM2.5)の濃度が上昇するなど、中国の大気汚染が世界的に問題視される中、自動車関連の環境規制が着実に強化されている。排ガス規制はユーロ基準がベースになっており、乗用車については「ユーロ4」に相当する第4段階の排出規制「国4」が全国で実施されている。

 

 さらに201641日から、「ユーロ5」レベルの厳しい排出規制「国5」が東部11省・市で実施される予定になっている(環境保護部、工業・情報化部2016114日付発表)。具体的には、北京市、天津市、河北省、遼寧省、上海市、江蘇省、浙江省、福建省、山東省、広東省、海南省の11省・市で、輸入、販売、登記される小型ガソリン車、小型ディーゼルバス、大型ディーゼル車(公共交通、環境衛生、郵政用途に限る)には、「国5」規制が義務付けられる。

 

 「国5」規制は今後、段階的に適用範囲が拡大される。201711日からは、全国で小型ガソリン車、大型ディーゼル車(バス、公共交通、環境衛生、郵政用途に限る)で義務付けられ、同年71日からは全国で全ての大型ディーゼル車に、さらに201811日からは全国で小型ディーゼル車にも義務付けられる予定だ。

 

<乗用車の燃費向上目標を段階的に設定>

 政府は燃費規制も強化している(注)。「省エネルギー・新エネルギー自動車産業発展計画(20122020年)」の中で乗用車の平均燃料消費について、2015年までに100キロ走行当たり6.9リットル(燃費14.5キロ)、2020年までに5.0リットル(20.0キロ)とする目標が掲げられていた。そして、201611日から、「乗用車燃料消耗量限値」(GB195782014)と「乗用車燃料消耗量評価方法及指標」(GB279992014)が実施され、乗用車の平均消費燃料について100キロ走行当たり、2016年は6.7リットル、20176.4リットル、20186.0リットル、20195.5リットル、2020年以降は5.0リットルを上回ってはならないとしている。

 

 さらに、「乗用車企業平均燃料消耗量管理弁法」の草案が完成しており、意見募集が間もなく行われ、目標未達成の企業には巨額の罰金が科されると報じられている(「政府調達情報網」125日)。

 

AEB普及に向けた動きも>

 安全性については、欧州で2013年から大型車への自動緊急ブレーキ(AEB)装着が義務化されているが、中国においては義務化されていない。そうした中、201410月にシンクタンク中国汽車技術研究中心(センター)の趙航主任が、2018年にCNCAP(中国車両安全基準)に電気自動車や歩行者保護に関する試験内容を加えるとともに、中国の道路交通の特徴を踏まえ、AEBシステムに関する試験や評価研究を行うかもしれないと表明したと「中国自動車報」(20151027日)が伝えている。

 

 この報道によると、中国自動車工業協会制動機委員会の顧一帆顧問も、国外のAEB技術が成熟する中、中国においてはまだ普及していないが、国外と急いで歩みをそろえ、法律と産業発展の両面からAEBシステムの装着率を高めるべく注力するとしており、今後の動向に注目する必要がありそうだ。

 

(注)20121月より米国の企業平均燃費(CAFE)規制に相当する規則を導入。中国の国産車に限らず、輸入車も対象。

 

(宗金建志)

(中国)

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