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所得税法を改正、高額金融商取引税を導入-中南米における制度改定の動向-

(ベネズエラ)

カラカス発

2016年02月25日

 ニコラス・マドゥロ大統領は、一時的に大統領に立法権を付与する「大統領授権法」の有効期限だった2015年12月31日の直前に、複数の政令を発効させた。その中には所得税法の改正や高額金融商取引税の導入など、企業活動に影響を与えるものが含まれている。

<金融機関の法人税率を40%に引き上げ>

 20151230日付特別官報6,210号に公示された政令2,163号により所得税法が改正され、即日発効した。同政令により所得税法の第5条(収入金額の計上時期)、第32条(繰り延べ資産)、第52条(税率)、第84条(源泉徴収)、第171条および第193条(インフレ調整)、第198条(発効日)が修正され、第56条と第57条(税の減額)が削除された。

 

 今回の改正で重要なのは、第5条、第32条、第52条、第171条の修正と第56および第57条の削除だ。第5条は事業所得における収入金額を計上すべき時期について定めている。これまで、財、動産、不動産の譲渡や使用、サービスの提供による収入金額を計上すべき時期は、支払いがあった時点とされていたが、今回、一部の例外を除いて取引が発生した時点に改められた。これに関連して第32条の繰り延べ資産について規定していた箇所が削除された。

 

 第52条は法人税率について定めている。これまでの最高税率は34%だったが、今回は銀行業、保険業など金融機関については所得額に関係なく税率を40%に引き上げた。

 

 第171条はインフレ調整について定めているが、国家税関徴税統合庁(SENIAT)に「特別納税者」として認定された納税者および金融機関は、所得税法第9編第2章が定めるインフレ調整を適用しないとした。特別納税者の認定要件は、年間所得3UT(租税単位)以上、もしくは月間所得4,500UT以上の法人、個人事業主であることとされている。ベネズエラでは税金や罰金、従業員手当や行政手続き料金などを計算する際はUTを用いている。現在は1UT177ボリバル(約3,186円、1ボリバル=約18円)のため、認定要件は年間所得531万ボリバル以上、もしくは月間所得796,500ボリバル以上ということになる。なお、インフレ調整の適用対象から除外された納税者の会計の調整方法は、後日SENIATが規則を公表するとしている(第193条)。

 

 第56条、第57条の削除も影響が大きい。工業、農産加工業、建設、電気・通信、科学技術、観光業、農業、漁業、環境の分野で技術革新や生産拡大に資する新規投資を行った場合、投資額の一部に相当する額を税額から差し引くとしていた条文が削除され、新規投資への税制上のインセンティブが廃止された。

 

<余力のある法人などからの微税を強化>

 また、同日の特別官報に公示された政令2,169号により、高額金融商取引税が導入された。特別納税者の法人および個人事業主が課税対象で、口座引き落とし、振り込み、カード決済、小切手や有価証券の譲渡など、あらゆる金融取引に際して取引額の0.75%が税金として徴収されることになる。個人であっても特別納税者への支払いに課税される場合がある。なお、同税は経費として認められない。

 

 「エル・ムンド」紙(電子版17日)によると、経済調査会社ODHコンサルタントは、高額金融商取引税の導入により、2016年に予定されている税収14,241億ボリバルの0.85%に当たる121億ボリバルが確保できるとしている。金融取引に税金を課すのは比較的容易で、かつ税金を逃れるのが難しいとみている。

 

 ベネズエラの徴税システムは十分に整備されておらず、所得税や社会保険料などが適切に支払われていない。OECDが発表した中南米・カリブ諸国における税収(GDP比)をみると、多くの国が税収を増やしている中、ベネズエラの税収の伸びの低さが際立っている(表参照)。その一方で、年金受給者の拡大や国営企業の労働者の増加により公的部門の支出は拡大傾向にある。政府は資金余力のある法人を中心に徴税を強化する姿勢を示しており、今後も新たな税導入の可能性があるといえそうだ。

(松浦健太郎)

(ベネズエラ)

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